第5話
「あれ、ここはたしか……」
モニターからの光しか光源がないような部屋で研究者風の男は、モニターの一つに表示された通知を見てこう呟く。
「ああ、第2クローン施設か。
あそこは見つかりやすいところにあったからな〜。
データ削除処理と侵入者排除モードは起動してあるから大丈夫かな」
そう言うと、通知についていたボタンを押した後、元の作業に戻った。
〜〜〜〜〜
「何が起きた!」
ι-15がいきなり倒れ、それと同時に別働隊が連絡を取ってきた。
『子供達とι-32がぶっ倒れました!
ι-32は何も言わないんですが、子供達はとても苦しんでいます』
「保護はどれくらいで進んでいる」
『3箇所のすべての子供達を集め終わってます。
しかし、アイシャの姿が無いようです』
また、隊長の通信端末にはバッタの緊急装置が起動したことを示す光がついていた。
(バッタ……?
もしかしてアイシャか?
しかし、充電スポットに置いてるなら隠蔽装置が起動しているはずだが……)
だれが起動させたかは知らないが、緊急装置の催眠ガスを吸ったのなら5,6時間は起きないはずだ。
これからどうするべきかを考えていると「隊長、あれ!」と隊員の呼ぶ声が聞こえた。
見ると、先程のホログラムの地図が形を変えてどんどんと人の形になっていった。
『ようこそ、軍の飼い犬くんたち』
ホログラムの変形が終わると同時に、部屋の天井にあるスピーカーから男の声が聞こえてきた。
『この施設の案内を楽しんでくれたら幸いだ』
「誰だお前は!
何をした!」
隊員の一人が問いかける。
『すまないね、「私は誰か」という質問には答えられないよ。
これは録音だから決められたことしか喋れないんだ。
答えられない質問が来たらこう答えるようにしているがね』
この時代、ホログラムを使えるほどのデータ量の通信をすれば、すぐに発信元を特定されてしまう。
このホログラムへの質問はほとんどできないと思ったほうが良いだろう。
『しかし、「何をしたのか」という質問には答えられる。
簡単に言えば、クローンたちに「侵入者を排除せよ」という命令をした上で、エネルギー生成装置のCPを逆流させただけさ。
それにより、クローンたちは強制的に過集中状態になって君たちを襲い始めるはずだ』
「子供たちの様子はどうだ」
子供の保護に行った隊員に連絡を取る。
『そいつの言うとおりです!
どうにかして動きを抑えようとしてますが、この人数では』
そこで通信は途切れた。
「おい!おい!」
ホログラムがさらに話し始める。
『もしも君たちが生き残れたらこの施設にある情報は全て持っていくといい。
まあ、電子データはほとんど消えてるはずだけどね。
それじゃあね』
言い終わるとホログラムが消えて、あたりは非常灯が灯るだけの暗く、そして赤くなった。
「とりあえず、こいつを持ってあっちに行くぞ」
隊員の一人がι-15を背負う。
すると、ι-15がいきなり体に巻き付いてきた。
「え?」
突然のことなのでその隊員は驚いて固まっている。
固まっている間にι-15は口を大きく開けてその隊員の首に思いっきり噛みつき、爆発した。
「た、退避!」
隊長の一声のおかげで周りにいた隊員は無事だったが、背負った隊員は装備ごと黒焦げになった。
『言い忘れてたけど、ιシリーズには爆弾がついてるから気をつけてね』
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