第4話
「ここから、説明用の順路に入ることができます」
ι-15はまず、施設に入ってきたところからは反対にある部屋に案内した。
「まず、この施設がなぜできたのかを説明します」
「その前にいいか?
なんでこんなところにこんなのがあるんだよ」
この部屋に入ると、そこにはまるで小学生用の工場見学のようになものが広がっていた。
「前オーナーの夢と現在の管理者の悪ふざけによるものだと知らされております」
「前オーナーだと?」
「はい。
本来、この施設は豚や牛などの畜産動物、そしてそれらのための餌をクローン生産して食肉を市場に供給するために建てられました。
しかし、完成前に前オーナーが失踪して現管理者がこの工場を買い取って現在にいたります」
壁に描かれた小学校低学年向けの絵を使いながら説明を続ける。
「現管理者はこの工場のクローン技術を人のクローンに応用し、さまざまな事業を行なっております。
ここ1年ほどは戦闘用クローンを育成しており、施設の3箇所それぞれで30体ほどを育成しています」
コントロールルームでも見た立体地図を使って説明をする。
「ここで消費される食料などもクローン技術で生産され、余剰分は関連施設へと回されています」
「ここのエネルギー源はどうなっているんだ。
見た限り、外部からの供給はない。
もしかして、核や反物質でも使っているのか?」
「新たなエネルギー源として『CPシステム』を使用しています」
子供向けの絵が付いたCPシステムの概要が書かれた紙を渡し、そこに補足をしながら説明を始める。
「CPというのはConcentration Point のことで、集中力をポイントに見立てて使用することができます。
このシステムは関連施設の一つで開発されたもので、CPをエネルギーに変換することにも成功しています。
このシステムを利用するには専用の液晶付きデバイスが必要で、使い始める前に数日間は着けてておかなければいけません。
また、CPはデバイスの装着者の生活において余分な集中力を変換したものなので使い切っても体に害はありません。
この施設においては、効率の良いCP回収のために育成中の個体たちは1日18時間の生活をさせています」
ここで、2枚目の紙が渡される。
「CPの主な用途としては、自分で消費することによって強引に
また、この施設の地下にある装置にポイントを入れることでエネルギーの生成をすることもできます」
そう言いつつ、その機械の取扱説明書の写しを手渡す。
「何故ここまでの説明をするんだ」
「現管理者から、次にここに来たものにこの施設の全権利を渡すように言われています。
また、権利の受け取りを承認した場合はこのボタンを押すように言われています」
壁には赤いボタンがあり、そこにむかっていかにも「押してね」というように強調線が書かれている。
「俺たちは依頼を受けてここに来ただけだ。
ここの権利は受け取れない」
今回の仕事の契約では、『依頼したもの以外でなにか有益なものがあった場合、それは見つけた者のものになる』となっているため、この権利を受け取ることはできる。
しかし、ここの権利を受け取ってしまうと軍に変な警戒をされるかもしれないし、払わなければいけない税金も増えるだろう。
この施設を運用したとしても、伝手がないので利益を得ることは難しいだろう。
なので、軍に
「わかりました」
ι-15はそう言うとそのボタンに近づいて、3回ボタンを押した。
ι-15はその場に倒れた。
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