第3話

 アイシャとの最後の連絡から2日後の10時に作戦は始まった。


 以前から少しずつ広げていた穴から静かに施設に潜入した後、近くの部屋から順番に調べていく。


 多くの部屋は食糧生産ラインや洗濯室、倉庫などのここのような施設にはよくあるものばかりだ。


 途中で武器庫もありはしたが、どれもが彼らには小さかった。


 しかし、それらは武器であることには違いないので証拠品として何人かに基地へ持って行かせた。


 10部屋ほど調べたところで、初めて職員らしき人物を発見した。


「お前はここの職員か?」


 隊員の一人が銃を突きつけながら問いかける。


「はい。

 私はここで生まれ、ここの保全・管理のために育てられたι-15イオタフィフティーンです。

 何かお探し物ですか?

 どこに行きたいのですか?」


「それでは、コントロールルームに連れていってもらおうか」


「わかりました」


 ι-15は慌てる様子も何もなく、彼らを先導するように進んでいく。


 傭兵たちは数人が彼女に銃を向けて警戒しつつも、後ろに続いて進んでいく。


 進んでいく最中に彼女を観察してみる。


 もしも彼らが何も知らないただの一般人であったならば、彼女のことをただの若い女性だとしか見ないだろう。


 彼らもそうであってほしいと思っているが、ここで生まれたということだけで警戒しなければならない存在となる。


 見た目は10代後半で、髪はブロンズ、ベージュ色の肌で腕を見るとそれほど筋肉はついていないように見える。


 問いかけた時に見た顔は戦場や新聞では今までに見たことはなさそうだ。


「こちらがコントロールルームでございます」


 色々考えているうちに、目的地についたようだ。


「中には何人いるんだ」


「普段は5人ほどです」


 中の確認を行なっていた隊員に目配せすると頷いた。


「突入しろ」


 ι-15が開けた扉を、バリア機能を持つ盾を前にして突入する。


 中は暗く、部屋の真ん中には青いものホログラムがあり、それを囲むようにι-15と同じ顔の4人が、そして奥の少し高くなっている席に1人がいた。


 ホログラムはこの施設の立体地図のようであり、赤や青の点が地図上を動いている。


「お前がここのトップか?」


 隊長が高いところにいる個体に問いかける。


「今現在、この施設内に居る個体の中で最も権限を持った個体という意味では、私――ι-1がトップでございます。

 しかし、私はあくまで管理者代理です。

 管理者への連絡は必要でしょうか?」


「いや、必要ない。

 その代わり、この施設の説明を頼めるか?

 それと、子供達のところへの案内も」


「わかりました。

 ι-15は説明を、ι-32は育成隊への案内を」


「わかりました。

 こちらへどうぞ」


 ι-15による施設紹介が始まった。


 そして、ι-32と共に数人の隊員が子供の保護へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る