Side バッタ(???)

第1話

「とりあえず、地図は手に入りそうだな」


 強面で筋肉質な体の男がモニターの前で伸びをしながらそう呟く。


 ここはとある施設の外に軍が作った地下基地だ。


 基地といってもハイテクな装置がいくつもあるようなところではなく、装備のメンテナンス装置と通信設備、あとは小さな工作機械くらいしかないような少し深い防空壕のようなところだ。


「隊長のあの声、面白かったですよ。

 あいつらなんて、服が汚れるのを気にせずに床を転がり回ってましたよ」


 そう言いながら近づいてきたのはこの部隊の副官だ。


「それで、中の様子はどうでしたか?」


「ダクトの中から見ただけだと全然わからねえ。

 最初は本当にここであの子供殺人鬼どもができてるのかって疑ってたけど、あの顔を見た後じゃ信じるしかないな」


 ため息をつきつつ視線をモニターに写っている顔を見る。


 その顔は、自身をI-3と名乗った少女のものであるが、彼が何回も見てきた子供殺人鬼の顔でもある。


 ここにいる者はある傭兵部隊に所属しており、ここには傭兵の仕事で来ている。


 傭兵は地域の紛争に参加したり、危険な事件や地域の捜査なども行なっているが、普段は地域のイベントや清掃を手伝う何でも屋のようなことをしている。


 今回の仕事は彼らにとって1年ぶりの大規模な荒事の依頼だ。


 依頼の概要こそは「とある施設の襲撃」というありふれたものではあるが、依頼主が軍の上層部なので年中金欠の彼ら以外は受けることがなかった。


 依頼主からの指示は、「中にいる子供たちの保護」「中にある情報の回収」「子供以外の施設内にいる者の排除」の三つだ。


 依頼主によると、最近増えてきている街中の殺人事件の犯人や、紛争での戦闘員がここで育成生産されているらしい。


 実際、この部隊にいる何人かが最近の事件、紛争においてまったく同じ顔の別人を何人も見つけているし、アイシャの顔もその顔のうちの一つだった。


「とりあえず、あの子に依頼をしたから地図は手に入るだろう。

 それまではこっちでできることをしよう」


「わかりましたバッタさん」


「おい!」


 ふざけた雰囲気の中、傭兵たちはそれぞれの仕事をこなしていく。

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