第2話(後編) 日常回

「それじゃあ、運動を始めるよ!」


 そういうと、円に並んでいた大人たちが後ろに置いていた機械や道具を設置していく。


 子供達はそれらを使って運動をする。



「いたっ」


 最初にアイシャがやっているのは機械を使った運動だ。


 運動といっても、体を動かすというより反射神経を鍛えるようなものだ。


 用意されている機械は5〜10ミリほどの穴が空いた筒から空気を使ってボールを打ち出すというものだ。


 アイシャもボールが遅ければ十分避けられるが、ここでは他の子のためにかなり早く設定されているため避けきれずに体に当たってばっかりだ。


「頑張ればちゃんと避けられるはずだよ!

 頑張って!」


 先生はずっとそんなことを言っているが、避けることができなさそうだ。


 


「やぁ!てい!」


 今度は木剣を使った模擬戦だ。


 剣道やフェンシングのようなしっかりとしたルールもなく、ただの斬り合いごっこをしている。


 木剣はおままごとの包丁サイズのものから、大人一人よりも大きな剣まで用意されているが、大抵の子は自分の身長の半分〜3分の2くらいのものを使っている。


 アイシャはサバイバルナイフほどのものを使っているが、見た目よりもかなり重いせいで剣に振り回されている。


「てりゃー!」


 相手をしていた子がアイシャに剣を振り下ろす。


「うわぁ!」


 なんとか防ぐことができたが、剣を弾かれてるしまって負けになった。





「今日の運動はここまで!

 みんな、頑張ったね!」


 先生はそう言うと機械や道具を片付けて子どもたちが通ってはいけない通路の先へと消えていった。


 このあとは昼食だ。



「俺はこれ!」「それ欲しかったのに!」「今日はこれにしようかな〜」


 昼食は朝食とは違ってゼリー飲料のようなもので、アイシャが選んだものは甘さと酸っぱさが良いバランスになっていて、後味もすっきりしている。


 それ以外にも、その味よりも酸っぱさが弱くて少し粘り気のある甘さを感じるものや、酸っぱさはないがかなり粘り気のある強い甘さを感じるものなどもある。


 容器にはフルーツ風味と書いてあるため、「フルーツ」とはそのような味がするのだろう。




 昼食が終わると、寝るまでの残りの時間はほぼ全て自由時間だ。


 この自由時間では売店が開く。


 そこにはロボットが設置されており、ロボットに話しかけることでCPを使ってものを買うことができる。


 アイシャが読んでいる図鑑や昼食で出されたもの、遊び道具などが売られている。


「ロボットさん、ここの地図ちょうだい」


「チズ、デスカ?

 アリマスガ、リユウヲオウカガイシテモ?」


「ずっとここで暮らしてるけど、まだ行ったことがないところもあるでしょ?

 そこに行ってみたいの」


「スコシオマチクダサイ…………

 15CPニナリマス」


 すると、アイシャの端末に『YES』『NO』のボタンが表示された。


 そしてアイシャは迷いなく『YES』をおす。


 アイシャの残高から15CPが消費された。


「コチラ、チズデゴザイマス」


 プラスチック製の筒状の容器に入った地図を受け取る。


 周りに誰もいないところまで来て広げてみる。


 寝室や食堂、運動部屋はいつも使っているが、それ以外にもたくさんの部屋がある。


 普段から入れるところだけでなく、普通なら子供達は入れないところまで細かく書かれている。


 一通り見たところでアイシャは満足し、図鑑を置いていたところに片付けた。


 次に見るのはよるバッタと会う時だろう。

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