第2話 (前編) 日常回

「I-3、起きて。朝だよ起きて」


 アイシャI-3は一緒に暮らしているI-7に揺さぶられて目を覚ます。


「んぅ」


 しかし、昨日のよふかしのせいですぐには起きれない


「このままだと、朝ごはんが他の人に取られちゃうよ」


 アイシャは眠そうにしながらも起き上がる。


 そうして、枕元に置いてある服に着替える。


「うん、行こっか」





 食堂にはたくさんの子どもたちが集まっており、おしゃべりを楽しみながら食事をしている。


 食事には小さな窓があり、そこからペースト状の食事が毎日出てくる。


「今日のご飯は黄色と緑、それと赤か。

 緑は苦手なんだけどな〜」


「そんなこと言ってもI-7の分はたべてあげないよ。

 ちゃんと自分の分は自分で食べなきゃ」


 後ろで、自分の分も食べさせようとしていた子供達は少し残念そうに、あるいは恨むようにアイシャを見て元いたところに戻っていった。


 そのあとは何事もなく食事が終わった。




 食事の次は自由時間だ。


 多くの子どもは追いかけっこなどの運動をしているが、アイシャは運動することが苦手なため売店で買った図鑑や本を読んで時間を潰すことが多い。


「ねえI-3、この真っ黒でところどころに白い点があるのって何?」


「それは星空って言ってね、真っ暗な空の上に星って呼ばれてるのが光ってるらしいんだよ。

 見てみたいな〜」


「ふ〜ん」


 聞いた子は興味がなさそうに返事をしてどこかに行ってしまうがアイシャは気にも止めずに読み続ける。


 途中で「こっちで一緒に遊ぼう」だったり「これなに?」だったりを言われたが、それに生返事を返したり熱心に説明をしたりして時間を過ごした。




「みんな〜、運動の時間だよ〜」


 本を読んでいると、そんな声が聞こえてきた。


 声の方には数人の大人が円を作るように立っており、その中には一人の女性が立っていた。


 この大人たち(特に真ん中にいる女性のこと)をアイシャたちは先生と呼ぶ。


「I-3,行こ」


 本を片付けて、近くにいた子といっしょに先生のもとに行く。


「ちゃんと全員揃ったね?

 最初にご褒美の10ポイントだよ」


 そう言うと先生は手元にあった機械を操作する。


 機械を操作し終えると、子どもたちの腕につけてあった黒い板のディスプレイに『+10CP』と表示され、現在の所持ポイントに加算された。


 CPとは、ここでの通貨のようなものでもあり、昼食後の自由時間の売店で色々なものを買ったりできる。


 CPは朝に10〜20ポイントがもらえ、『運動』の時間に参加したりすることでももらえる。


「それじゃあ、運動を始めるよ!」

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