館の一夜
さて、原生種の皮を求めて不夜国に向かうことを決めた俺達だったが……。
「オークションに行くなら……懐、寂しいな」
「そうだのう。最低でも金貨100枚。競う相手もそれなりに持ち寄るだろうしの」
「だよなぁ……」
グルバと共に頭を捻るのは、前も悩んだ金銭の問題だ。
競売という形式をとっている以上、元手は必要になる。
エリューズニルの中庭に設置された風呂で、魔法で投影された夜空を見ながら二人して唸る。
「ワシの貯蓄ならいくらでもあるのだが……」
「自分でもめんどくさい性格なのはわかってるけど、それ使うのは無し。仕事頼んでおまけに出資までは頼めないよ」
「ならば若よ、何か策はあるのかの?」
「……俺が手に入れた全財産はレナちゃんに剣を渡した時の金貨50枚……まあ、やりようはいくらでもあるか」
「ほう」
若干の長湯に付き合ってくれたグルバは、俺達が入っているのと同じ露天風呂で泳ぎ回っているガルムを微笑ましそうに見た後、面白そうに口の端を上げた。
「またよからぬことでも考えとるのか?」
「よからぬ……ってわけでもねえよ。不夜国は賭博の街だし」
「……まさか、ギャンブルなどと言い出すのでは……」
「当たらずとも遠からず……って感じだな。その方法なら、普通にギャンブルするより確実だ」
「二人ともなに話してるのー?」
水しぶきを上げながらバタバタと犬かきで俺達に近づいてきたガルムを受け止めると、指を一本上げる。
「不夜国でのオークションは……」
「三日後だ」
「なら丁度いいな」
「丁度…………おお、なるほどの」
「??」
置いてけぼりのガルムは首を傾げながら俺とグルバの顔を見上げる。
純粋な狼っ子の耳をフニフニと弄りながら聞く。
「――――ガルム。頑張って戦うから、応援してくれるか?」
「ええええええッ!? 王頑張るの!? 応援したい!」
「そかそか。ありがとなー」
風呂から上がり身体を震わせて水を飛ばすガルムを拭いてやると、服を着てからグルバの背に飛び乗って遊び始める。
「じーじ、進めー!」
「では若よ、ワシはガルムを寝室まで運んでやるわい」
「おー、おやすみー。明日から稼働するぞー」
「任せい」
「らじゃーっ!」
ガルムがグルバを操作する体で離れていく姿を見送ると、そのまま自室に向かう。
すると、向かいから寝巻に着替えたニヴルが子ドラゴンに身体を変化させているニドを抱きながら歩いてきた。
随分とぐったりしているニドを、嘆息しながら仕方なさそうに胸に抱えるニヴル。
「どうしたニヴル」
「あっ、屍王……お恥ずかしいところを」
「……うぅぅ゛……揺らすなぁ……」
「飲みすぎなんです、あほドラゴン」
あー、またいつものアレか。
この二人……まあ件のフレスヴェルグも含めて三人。
仲がめっちゃ悪いくせに、酒の好みと話が合うのだ。
難儀な関係だが……。
「ほら、行きますよ」
「みずぅ……」
「わかりましたよ……もう」
本気で嫌い合ってたら殺し合いでもしてしまうのがヘルヘイムの奴らだからな……関係的には悪くないのかもしれない。
「おやすみ」
「おやすみなさいませ、屍王」
「おあー……」
ぐったりしたニドが尻尾を振ると、そのままニドの部屋に直進していく。
あれは結局一緒に寝てやるパターンだ、懐かしいな。
俺がいなかったら瓦解してしまうヘルヘイム。
今回休息期間を取ったのは、このありかたを少しでも変えるためだ。
今ある平穏も、何気ない日常も、俺がいなければなくなってしまうことが分かってしまった。
「……ぶっちゃけ、世界とか興味ねえんだよな」
偽らざる本音だ。
俺に依存しなければ生きられないあいつらをどうにかできるのは、俺だ。
「神には悪いけど……もう少しゆっくり行かせてもらうぜ」
八戒の中に少しでもある絆。
それが成長して初めて、あいつらも楽しく生きることができる……と思う。
だからこそ、八戒の回収は急ぎたい。
「まあ、それはそれとして」
不夜国でのことに気持ちを向ける。
俺が思いついた金策。
「―――――
魑魅魍魎の戦いを見世物に金と見栄と闘技が渦巻く不夜国名物。
観客は出場者『
「今の俺でどこまで勝ち上がれるかなぁ……」
負ければ全財産を失うことになるとくれば、俺も手を抜けない。
明日、不夜国への一路を思い浮かべ、いつになく浮ついてしまうのだった。
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