第32話 『宇宙』 その2
あまり、長い時間ではなかったろうと思う。
ふと、気がついたら、そこは、異世界だった。
『わ。これは、いかなことか。』
あらゆるものが、色とりどりに沸き上がり、取り巻き、通りすぎ、形を変えてゆき、さらに、あちこちに、消えて行くのだ。
『やっかいなところに、連れてこられたみたいね。』
『帰ってきたよ。』
プリンが、多少は懐かしそうに言ったのである。
『われわれ』の世界か。
『これは、でも、たぶん、見せかけね。プリンさんには、きちんと見えているのかもしれないけれども。』
『プリンさん、見えてるの?』
『うん。ばらくんにも見えてるの。』
プリンさん105歳は、ぬいぐるみを抱き締めている。
『まあ、この世界のぬいぐるみさんなら、そうかなあ。』
『うん。』
プリンさんは、いやがっていた割には、平気みたいである。
『なんだか、気分悪くなりそうだ。』
ジョークではなくて、実際に、あまり気分は良くなかったのである。
が、そこに、さらに、怪しいものがやって来た。
立体的な、4角形や、丸や、5角形などに次々に形を変えながら、妙な乗り物らしきが、やって来たのであった。
『お迎えにあがりました。』
という声がしたが、が、その、姿は見えない。
お迎えにあがりました、は、あまり、有り難くはない感じがした。
乗れるのだろうか?
床が見えていないのだから。
『これ、リムジン。』
プリンさんが言う。
『リムジン? これが?』
『リムジン。ふみたい、好き。』
どういう関連性かは、分からない。
しかし、もはや、乗り掛かった船である。
行くしかないのだったのである。
🚘️
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