第30話 『宇宙』 その1


 宇宙については、素人には、あまりに謎だらけである。


 しかし、毎日、毎晩、ぼくたちは、宇宙を眺めていて、それは、必ずや、はるかな悠久につながっているはずなのだ。


 あんなに、ひたすら、だだで、目の前に拡がっているのに、月以外には、人類はまだ行けていない。


 月だって、そう簡単には行けない。


 だから、ふみたいの自動車ごと、宇宙に誘拐されたなんて、ほとんど、嘘みたいであった。


 しかし、ぼくたちは、つまり、ぼくと、プリン、ふみたいは、自動車に乗ったまま、宇宙に連れ出された。


 周囲には、たくさんのお星さまが見えている。


 つまり、宇宙船に幽閉されているという感じではない。自動車のまま、宇宙をさ迷っている。


 しかし、かなり、早いみたいだ。


 もう、目の前に月があるから。


 だから、なにものかに意図的にどこかに運ばれているのは、間違いはなさそうなのだ。


 プリンが言う。


 『プリン、これに乗ってきた。』


 『はあ? これ?』


 ふみたいが、やや、呆れたように返した。


 『うん。』


 『つまり、限りなく透明な宇宙船てわけか。』


 『常識に反しますよ。』


 『あなた、食べられる側の子孫でしょ。知らないの?』


 『知りません。なんの子孫であろうとも、知らないものは、知りようがないです。』


 『そらまあ。そうでしょう。そう、むきにならないで。』


 『す、すいません。つい、興奮して。』


 『まあ、むりもないわ。いったい、どうなってるんだ。』

 

 すると、窓の外に、なんだか、船に乗ったみたいな、つまり、売店が、近づいてきたのである。


 『なんだ、あれは?』


 つまり、川下りの船に近づいてくる、売店船である。


 こんこん、と、おばさまが窓を叩いた。


 『まいどお。いっぷくしまへんかあ。』


 船には、ジュースやお菓子、お酒、お弁当。さらには、ぬいぐるみや、ロボットとかのおもちゃまで、やまと積まれていた。


 『ここでしか、売ってない物ばかりれすや。お支払は、カードでオッケーれしよ。みな、正規品。高品質間違いない。お酒は、冥王星の衛星カロンで醸造した本格日本酒れし。ワインは、火星の水で育った火星ぶどうにより造られましたねん。じょうちゃん、ぬいぐるみはいかが? これ、一番人気の、ばらくん。金星ねこちゃんやねん。火星弁当ありまし。金星ちらし寿司も。こちら、水星もなか。木星ぷりんも。土星カステラもありましよ。』



         😻


 


 


 


  


 

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