第14話 『プリンとふみたい』 その4


 『まあ、かわゆい! すごいコスプレね。あなた、お名前は?』


 『プリン。105歳。』


 わ、言っちゃったよ。


 身長50センチのプリンが、靴を含めて、170センチくらいはありそうなふみたいを、巨大な眼で見上げている。


 『ぶっ! はははははははははは、』


 ふみたいは、大笑いした。


 まあ、そうだよな。


 誰も、妖怪なんて思わない。


 まして、異世界生物なんて。


 『あの。姪っ子です。事情があって、預かってます。』


 『ははははははは。そ、そうですか。ははははは……』


 ふみたいは、まだ、笑いながら言った。


 しかし、帰ったら、きっと裏をとろうとするだろう。


 そして、分からない。


 ぼくが、誘拐したのではないか。


 あるいは、もしかしたら、ふみたいは、特殊機関の職員かもしれないから、突然、黒服や、あやしいマークの制服の分厚いヘルメットを被った連中が、光線銃を手にして、ぼくとプリンを逮捕に来るかも。


 それから、巷にはない、近未来的な地下の秘密施設に連れてゆかれ、不可思議な色つき光線にさらされながら、尋問されるのだ。


 『ふふふ。まあ、巧みな変装ね。次は、正体を見せてね。』


 む。


 含蓄のある台詞だ。


 たしかに、なにかを意図しているに違いない。


 ぼくは、ちょっと震えた。


 『最近、通り魔や、電話による詐欺が増えています。気をつけてください。じゃ、また。』


 ふみたいは、そう言うと、大きな古そうなリストをぱしゃ、と閉じて、さっさと階段を降りていった。


 『また、えらく、あっさり、引き上げるな。』


 ぼくは、ますます、疑問を抱いた。

 


         🔅 






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