第12話 『プリンとふみたい』 その2


 ふみたいは、アパートの部屋を、一軒ずつ叩いて回った。


 しかし、誰も現れない。


 もちろん、出ないように言われている。


 表札はないが、部屋には『あらし』『ひなん』『パニック』『そうなん』など、怪しい名前が付けられている。


 電気のメーターは、どこも回っていない。


 ま、それはそうなのだ。


 『われわれ』は、電灯が必要ない。


 明るくても暗くても、よく見えるから、必要がないのだ。


 冷蔵庫や洗濯機は共同である。



 『ふうん。あやしい。あきらかに、なにかにおうな。生活感があるんだなあ。なにか、中に居る。しかし、踏み込む理由はない。ううん、匂うな。』



 ぼくは、廊下で、とうもろこしを焼いていた。


 お醤油を掛けながら。


 それは、匂うだろう。


 ふみたいは、匂いに引かれて、2階にやってきた。



 『こんにちは。』


 ふみたいは、なかなか、美しい。


 制服も帽子も、良く馴染んでいる。



 『ども。ごくろさまです。』


 『あなたは、ここの方?』


 『はい。まあ、住人兼、管理人です。』


 『あ、お名前は?』


 『山谷 新 です。』


 『やまや、さんか。家主さんは?』


 『会ったことないですね。謎です。』


 『まあ、それは、たいへん。』


 『たしかに。』


 『外の入居者さんは?』


 『今はいませんよ。いたとしても、ゆうれいさんくらいですな。ははははははは。』


 ぼくは、ちゃかしたつもりだった。


 しかし、ふみたいは、真顔で言った。



 『それ、ほんとうに?』



      👻👻👻👻👻👻👻


 





 

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