第4話 産まれた場所

「ふわぁ〜。よく寝たぁ」

 ドラゴンは目を覚ますと、その場で大きく伸びをした。

「おはよう。気分はどうだ?」

 隣で座っていたエンジが皮肉混じりに言う。

「うん。スッキリしてて良い感じだよ」

「あっそ。そりゃ良かった」


 ドラゴンは辺りを見渡すと、最初に目覚めた場所とは違う洞窟の中だった。壁は綺麗に平らに削られている。

「……ここってどこなの?」

「俺様の家だよ」

「へぇ、結構広いんだね」

「……まぁ、お前にとってはな。(ったく、こんなに小せぇ身体のどこにあんな馬鹿力があんだよ……)」

 ドラゴンとエンジの体格差はまさにアリとゾウ。エンジの大きさに合わせて掘られた穴は、ドラゴンにとっては広い空間だった。


「お前もここに住むことになるからな。覚えとけよ」

「え?そうなの?」

「当たり前だろ。お前、自分の住処とかあんのか?」

「うーん。ボクが初めて起きた場所ならあるんだけど、住むならここのほうがいいかな」

「じゃあ決まりだ」

 エンジはそう言うと、ドラゴンの目の前まで歩いてきた。


「さて、お前といて分かったことがある。……お前は冗談抜きで強い。多分、今のお前より強い奴はいないだろうな」

「え、そうなの!?」

「おっと、喜ぶなよ。お前は自分の力の強さを自覚できねぇし、加減もできてねぇ。これじゃ俺達と一緒に暮らすことができねぇ」

「そんなぁ……」

「まぁ落ち込むな。全部俺が教えてやるよ。あと、アイツの気がむいたらあの狼のライドも来てくれるぞ」

「ほんとう!?やった!」

 ドラゴンは声をあげて喜んだ。

「とりあえず、まずはブレス噴くの禁止な。この森が吹っ飛ぶ」

「うん、分かったよ」


 一方エンジは、一つ気になるところがあったようだ。

「お前が最初に目覚めた場所って、どこなんだ?」

「うーん、暗い洞窟の中だよ」

「洞窟……。場所は分かるか?」

「うん、なんとなく。さっきの湖のところからなら道が分かるよ」

「よし、ちょっと教えてくれ」

 エンジはなんとなく、心当たりがあるようだった。


「はぁ〜、やっぱここかぁ……」

 ドラゴンに案内され、洞窟の前に着いたエンジは、大きな溜め息をついていた。

「どうしたの?」

「ここなぁ、魔力の溜まり場なんだよ。しかも、この森で一番デカいやつだ」

「へぇ、すごいんだね」

 エンジは、この洞窟のことについて思い返していた。

 この洞窟は魔力が集まっているせいで、森を荒らす動物が産まれてきて、その度にエンジが始末していた。

 しかし、次第にそれが面倒臭くなったエンジは、大岩で入口を塞いだのだ。

「お前が起きた時、ここ岩で塞がってたろ。どかしたのはお前か?」

「うん。じゃないと出れないよね」

「……やっぱお前、魔力で産まれたドラゴンなんだな。(しっかしなんでこんなヤバいやつになって産まれてくるんだよ……)」

 エンジは、しばらく考えていた。


(……これ、俺のせいか?)

 エンジはある一つの可能性に気づいた。

 エンジは次々と現れる荒らしに嫌気が差して洞窟を塞いだ。しかし、それは湧き出てくる魔力を洞窟に閉じ込めることにもなる。

 そして洞窟内が魔力でギチギチに満たされたとき、その膨大な魔力で目の前のドラゴンが産まれた。

(これ俺のせいか!?)


 むしろ、ドラゴンが産まれて運が良かったのかもしれない。キッチリ詰まっていただろう魔力は、ドラゴンの誕生によってかなり消費されている(その分全てがドラゴンのパワーとして蓄積されているが)。


 もしドラゴンが産まれずに溜まり続けていたら、洞窟が耐えきれなくなって大爆発を起こしていたかもしれない。まさに、昨日ドラゴンがぶっ放したあのブレス並みの威力の大爆発が。そうなってしまったら、今頃この森は魔力の爆風で消し飛んでいただろう。

(うっわぁ、あっぶねぇ……)

 エンジはそう考えると、少しホッとした。

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