浮は今日も夢を見る。

kenppy

第1話 浮の夢

夢というものを見たことがあるだろうか?

見たことがある人が大半だろうが、その内容を覚えていることは珍しいだろう。


そんな奇妙な夢と小さな男子高校生、古鳥浮(ふるとりうかぶ)の物語。



ーーー(アラーム音)


今日は猟師体験をする夢を見た。昨日は有名アイドルグループのファン、一昨年は家電量販店の社員。


僕の夢は毎日忙しい。


なんでそんなに夢の内容を覚えているかって?

正直、僕にもわからないと言いたいが、中学校に入ったときから毎日夢を見るようになった。


僕の夢はいつも、とても現実味を感じる。

そう、まるで本当のことかのように。


ー・ー・ー・ー・ー


「うかぶー、今日帰りに本屋行こ。」


この声は西海斗(にしかいと)、中学から同じ学校に通っている。いわば親友というやつだろう。

西は両親共に研究者で家には一人でいることの方が多い。

だからというわけではないが、よく僕の家に泊まりにきている。


そんなこんなで学校での生活は悪くない思う。

それという将来の目標もなくぼんやりと過ごす毎日に少し満足を覚えているのも事実だ。


そうこれ以上は期待していない。

1人の女の子に出会う前は。


ー・ー・ー・ー・ー


昼休み。


名前の知らない女の子に呼び出された。

直接ではなかった。クラスの女の子に彼女が食堂前のベンチで待っていると。


流石に人違いだろうと思い、僕はお弁当を食べる手を一度止めて食堂へ向かった。


「突然呼び出してごめんなさい」


彼女は身長の高い綺麗な女の子だった。名前は雛(ひな)というらしい。

僕は尚更、人違いを疑い思わず聞いてしまった。


「えーと、初対面で間違いなかったよね...」


彼女は少し黙り込んだかと思うと、決心したような真剣な眼差しで僕にこう言った。


「覚えてないかな、私たち夢の中で一度会ってるんだよ」


こういう時は驚くのが普通なのだろうが、あまりにも意味がわからなさすぎて僕は黙り込んでしまった。


ーーー(チャイム音)


彼女が何か言おうとしたところ、予鈴がなった。


「また明日、昼休みにここにきてもらっていい?」


「わかった...」


ただ僕に一片の大きな謎を残しで彼女は行ってしまった。


これが彼女との最初の出会いだった。

いや、本当に最初なのだろうか。


(2話に続く)

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