97.木戸のトラップ

 ショッピングモールの2階。

そこでは小太りの参加者がウロウロしていた。彼は戦闘力がないので表立って暴れたりはできずコソコソと隠れながら提央祭に挑む。そういう参加者は多かった。



「ふ~っ……今はまだ南場さんに見つからないようにしねーと……

……ん?」


そこで小太りの男は床に何かが落ちていることに気づいた。


本、雑誌だ。しかもその本には若い女性の全裸が載っていた。誰がどう見ても、エロ本だ。



「うっほぉ! こんなところにエロ本が落ちてるなんてラッキー!」


小太りの男はエロ本に飛びつき、拾い上げて読み始めた。


「うおおおすっげぇ! これすげーお宝……!!」


エロ本の内容はかなり過激で、小太りの男はすっかり夢中になって鼻の下を伸ばしながらエロ本を読みふける。


ここは戦場、提央祭の最中だというのに小太りの男は完全にエロ本に釘付けでスキだらけになっていた。

だから足元に何か怪しいものがあることに気づかなかった。



―――ギュッ、グイッ!!



「うわっ!?」



足元にあったのはロープの輪。それが小太りの男の片足を捕まえ、グイッと上に引っ張り上げられる。



「ひーっ!?」



小太りの男はエロ本を持ちながら逆さまに吊るされた。なんとも無様な光景だ。

ロープを引っ張ったのは木戸。小太りの男を罠にかけることに成功した。


「チョロい……チョロすぎる。こいつらの知能動物以下なんじゃねーのか?」


仕掛けたトラップに引っかかる参加者が続出し、木戸はほくそ笑んだ。



 エロ本は落ちてたのではない。木戸があらかじめ置いといたものだ。

これは木戸流エロ本トラップだ。


やり方は至ってシンプル。用意するのはエロ本とロープのみ。


エロ本を置いておきその近くに輪っかを作ったロープを仕掛けておく。

ターゲットがエロ本に夢中になっているスキにロープを引っ張って縛って吊るす。


こんなアホみたいな方法で何人も敵を倒すことができた。

提央町は日本一治安が悪く恐ろしい町と言われているが、どんなにヤバイ男でもエロ本の前ではひれ伏すしかないのだ。エロのパワーは偉大なのだ。



そう、この方法は流星とも非常に相性がいい。

流星がいくら強かろうがドスケベの王のような存在だから絶対にエロには勝てない。


いける。これなら流星に勝てる。木戸はそう確信していた。



「うおおおエロ本だぁ!」


グイッ


「おわあああなんだあああ!?」



エロ本トラップにかかる男がまた1人。

その光景をモニターで見ていた結衣は呆れたような恥ずかしいようなでかなり複雑な気分だった。



「……なんなんですかこれ……」


一体何を見せられているのか。結衣はそう言うしかなかった。


「なるほど、エッチな本で油断させて捕獲する作戦ですか……原始的な方法ではありますがこれはかなり効果的ですね」


菅原は冷静に木戸の戦略を高く評価した。



「なんせ提央祭に参加する人は欲望にまみれて女に飢えてる人ばかりですからね。その男心を利用したというわけです。女体の誘惑に勝てる人はなかなかいませんからある意味かなり強いですよこれは」


「……強いって言っていいんですかこれ……」




 町にある巨大なテレビで木戸の様子を見ている星羅も木戸の戦法に呆れかえっていた。


「あいつどんだけエロ本持ってんだよ。マジでキモい……

……まあでもやるじゃん木戸くん。思ったより活躍してるね」


星羅は呆れてはいるが思った以上に頑張っている木戸を高く評価した。




 ヒマになった流星はちょっと2階の様子も見てみようと思ってエスカレーターに乗って2階に上がってきた。


流星が木戸のいる場所に近づいてきた。

木戸はすぐに隠れ、エロ本の罠にかかるのを静かに待つ。


流星VS木戸の対決がいま始まろうとしていた。



 哲也以外は雑魚ばかりだが、それでも流星は絶対に油断はせずに気を引き締めていた。


流星にとって今回は一番大事な提央祭。前回の反省を活かし、万が一、いや億が一にも負けるわけにはいかない。

油断さえしなければ絶対に優勝できると流星は確信していた。だから刹那たりとも油断はしない。



その時、足元に本が落ちていることに流星も気づいた。

『制服巨乳美少女図鑑』という本だ。もちろんエロ本だ。



「…………」


油断はしない。何があっても絶対に油断はしない。常に集中して警戒しなければならない。油断はしないと強く決心しながらも流星はそのエロ本を拾った。


油断はしないと強く思いながらも、流星はエロ本を夢中で読んだ。

やはりこの男はエロには勝てなかった。



 それを見ている結衣は顔を赤くしながらも呆れた。


「……まあ南場さんなら食いつかないはずがないですよね」


あまりにも予想通りの展開になって菅原も当たり前のように実況した。



真里奈も頬を膨らませてエロ本に夢中になる流星にプンプンしていた。


鼻の下を伸ばす流星に呆れた。やっぱり女子高生が好きなのか。女教師じゃダメなのか? 女教師もいいのに。女子高生とはまた一味違う色気があるというのに。


女子高生モノのエロ本。エロ本にまで真里奈は嫉妬してしまった。



 ここまでは木戸の作戦が完璧にうまくいっている。

それもそのはず、木戸は伊達に流星の舎弟をやってない。流星の好みも性癖も知り尽くしている。


女子高生、巨乳、低身長、清楚系、年下系。まさに結衣のような女の子が好みである。


流星が読んでいるエロ本は木戸の一番のお気に入りでもある。

命の次に大切な宝物を犠牲にする覚悟を持って木戸は今日この戦場に来た。



その本の内容があまりにも好みど真ん中な流星は最大に興奮していた。鼻の穴が限界まで膨らんで鼻息も荒くなっていた。


「うおおおすっげぇ!! 乳輪の形も色も大きさもオレ好みすぎるぞこれ!!

結衣の乳輪もこんな感じなのかな……いや、もっとすばらしいぞ。これよりもっともっと美しい乳首だ、間違いない!!」


結衣の乳輪を妄想し性的興奮がさらに高まった。どこからどう見ても流星はスキだらけ、無防備な状態となった。

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