空のかなたに向かって

千千

面影

 三歩進んで振り返る


 一歩進んでまた振り返る


 そしてまた一歩、と思わせて――――くるり


 なんてね


 …………………………


 やっぱり、いない


 玄関の門扉の所、二階の小さなベランダ


 学校へ行く朝、洗濯物を干しているあなたへ


 結婚してからのお正月、お盆、それ以外


 帰る夜、私の姿が見えなくなるまでたたずむあなたへ


 むかしのように大きな声で、あなたを呼んで泣いてみようか


 手を振りたくて


 振ってくれていると信じて


 今度は私が、


 お母さん


 いってらっしゃい


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空のかなたに向かって 千千 @rinosensqou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ