弟子探し 八星の妖猫(後編)

「よし、じゃあ始めるぞ。」

「うn「グルァーーーーーー!」なに⁉」


試験を始めようとした途端、遠くで化け物みたいな咆哮と地鳴りが聞こえた。その地鳴りはこっちに向かってどんどん大きくなってくる。


「え?本当に何?」


地鳴りがする方向を見てみれば巨大な青鬼がいた。見た目はβテスト初日に倒した。


貪欲鬼どんよくき赤火せっかの色違いって感じだな。」

〔その通り、赤火と同系統エリアボス瞋恚鬼しんいき青木しょうぼくだ。〕

「うお!だれ?て、ヤクモのカラスか。」

〔ああ、ヤタノカラス番号006だ。よろしくな。〕

「おう、よろしく。……クロムって呼んでいいか?」

〔?いいが、なぜクロムなんだ?〕

「まあ、適当だよ。カラスの黒色に六で黒六くろむって感じだ。」

〔クロム……なるほど気に入った。これよりヤタノカラス番号006はコードネームクロムを名乗ろう。〕


お、気に入ってくれたっぽいな。


「ちょ、ちょっと!何のんきに話してるの⁈」

〔いや、特段慌てることはないだろう。〕

「まあ、そうだな。」

「なんで⁈」

〔まあ、ここにいるドールはあれと同格のエネミーを倒しているからな。〕

「え⁉そうなの?」

「そうだが?」

「じゃ、じゃあ…あれも倒せるの?」

「まあ、行けんじゃねえの?」

「グルォアーーーーーー!」

「と、もう、攻撃態勢に入ってるな。よし、こいつで試験をするか。ヤクモ、援護しくよろ!」

「え!あ、はい。」


さて、どう料理してやろうか……と、攻撃が来た!


「?」


 なんか、目線が俺からそれてる?こいつ何を見てるんだ?

て、ああ……ヤクモの仕業だな。

 ちらっと、ヤクモの方へ振り向けば、


「攻撃は全部そらすから、防御とか回避は気にせずガンガン行きなよ!」

「おう!」


回避を考えなくていいの楽でいいな。面白いくらい俺に攻撃が当たらない。


「お!どうがら空き、【仙術:剛腕の型】【仙術:剛脚の型】【仙術:養老ようろうてん】!はい、せーの【仙技:仙鬼剛げk…⁈」

「え、何?」


俺の攻撃が青鬼の体をすり抜けた。そして、すり抜けたかと思うと青鬼がこちらを嘲笑うかのように口元をゆがめた。めちゃくちゃ煽ってるみたいだ。そして……


「うわ、なんかめちゃくちゃむかつくんだけど……。」


 そう、なぜかわからないが、青鬼の顔を見たとたんめちゃくちゃ腹が立ってきた。多分これがあいつの能力。幻を見せて相手の精神に干渉し苛つかせるそしてこちらの攻撃が単調になり、隙が大きくなる。そこに攻撃が来る。さらに、あのデカい鬼自体も幻で本体はどっかにいると……ついでに風の動きからして、あの刺又見たいな槍には当てり判定がある。


「はあ……なかなか厄介だな。ヤクモ!時間稼ぎ頼んだ。」

「ええ!わ、わかった。」


が、ヤクモの幻術は有効みたいだし、時間稼ぎは任せて作戦を考えるか。

 さて、本体は別にあると考えるのが妥当だろうが……それに、本体はかなり小さい可能性がある。【六神通:天眼】で探せるか?


「……【天眼】。」


……!小さい反応があるな、て、めっちゃ速い!半〇狗みたいだな⁉多分こいつが青鬼の本体、幻の発生源だな。どうやって動きを止めるか……【仙鬼柔弾せんきじゅうだん】に【万象響振ばんしょうきょうしん】を重ねれば行けるか?いや、柔腕と剛脚を合わせて【万象響振】を重ねた方がいいか?


「よし、やってみるか。」

「え!何とかなりそうなの⁈そしたら、早くしてさすがにもう限界なんだけど⁉」

「おう、任せろ!【仙術:柔腕の型】【仙術:剛脚の型】【仙術:養老・纏】ふー【仙術:万象響振】……うん、いけるな。」


ついでに、筋力が高い悪魔形態になって……。


「【仙技:仙鬼響震せんききょうしん】!」

「ふぎゅ!」


 即興で生み出した広範囲技仙鬼響震。殴った場所を震源地に一定範囲に地震を発生させる。

 うん、本体も上手いことこけてるな……ついでにヤクモも盛大にズッコケてしまっているが……。


「よし、そこだな……【仙術:瞬動】そんで、【仙術:柔脚の型】……【仙技:仙鬼柔弾】!」


野鼠くらいのサイズの青鬼の本体を殴る。浸透系の技なので吹っ飛ばずそのまま衝撃が集約され青鬼本体が風船みたいに破裂する。


「ふいー……お疲れヤクモ。」

「はあ…はあ…お、お疲れさま……。」

〔二人ともエリアボス討伐おめでとう。ドールにも代理として報告をしよう。プレイヤードール=ヴォルージおよびプレイヤーヤクモ、エリアボス【瞋恚鬼:青木】の討伐に成功二名には称号【瞋恚の戦闘狂】を譲渡。プレイヤーヤクモに称号【ボス討伐者】【苦難を超えし者】を譲渡。プレイヤードール=ヴォルージにラストアタックボーナス【仙鬼長杖:恚樹いんじゅ】を譲渡。以上報告だ。〕


おお、新しい武器貰っちゃったよ……。見た目は、長い棒の先端に両端が外側にそれたU字型の金具がついた完全な差すまた、と言いたいが金具部分から四〇センチほどの間に無数の棘があり、金具の内側にも大小さまざまな棘が生えている。どう見ても本来の用途よりもかなり殺意がお高めだ。

 そして、俺の今使っている貪炎と同じ仙鬼長杖の名前を持っていることから同系統なのだろう。というか、貪炎もラストアタックボーナスだったのか……。


「あ、あのお……。」


もらった、恚樹に見とれていると、ヤクモがおずおずと話しかけてきた。おびえているようにも見えたが、まあそりゃそうかエリアボスが出てきたうえにプレイヤー一人で小災害を越したんだからな、おびえるのも無理はないか……。


「怖い、顔……。」


おびえてるのは俺の顔にだったらしい、そういえば悪魔形態のままだったな。俺は軽く謝り元の姿に戻り、エリアボスのせいでどっかに言った本題を持ってくる。


「おっと、悪い悪い……それじゃあ、仙術教えるから、ちょっと準備してくれ。」

「いや、ちょ!まてまてまて!」

「ん?なんだ?」

「いや、なんだ?じゃないよ!しれっと軽い地震起こしといて何ケロッとしてるの⁈あれ何?」

「何って……あれは俺のOSオリジナルスペルの仙術を複数使用してできたOAオリジナルアーツだが?」

「え、ま、まってじゃあ私もその仙術覚えたらあんな感じのことができるようになるの⁈」

「まあ、想像力と工夫次第だが……うまくいけばマップ破壊もできると思うぞ?」

「待って!マップ破壊?うそでしょ?」

「いや別に?いったろ?想像力と工夫次第だって。多分やろうと思えば百人中二、三人のプレイヤーができるだろうな。」

「マジ?」

本気マジ。」

「……。」


 なんか結構、すごい顔してるけど……配信者が生配信中にしていい表情じゃない気がするんだが……。


「まあ、習得して損はないから…早速やってみようか。」

「う、うん……。」


 ここからは、キングや響華と同じような訓練方法だ。コツとかは事前に二人から聞いているようで、【闘気】の習得にはさほど時間がかからなかった。次いで、【瞬動】の習得も【闘気】を習得してすぐに覚えた。残る【縮地】も元から空間認識能力が高い種族で予想通り響華よりもはやく【縮地】を使いこなした。

 ちなみに、仙術習得の条件に関しては、「オッケ~それで別にいいよ。」と軽く答えられた。少し拍子抜けだが話が早く進むし別にいいか、と思った。


「そんで、俺直々に与える仙術だが……【邪眼】にしようと思う。」

「めちゃくちゃ、中二病臭いやつが来た⁉」


 なんかめっちゃ嫌そうな顔してるんだが?そんなに中二病っぽいやつは嫌か?


「まあ、そういうな【邪眼】は視界内にいる敵対象に対して常にデバフをかけ続けるめちゃくちゃ強い仙術なんだぞ?」

「おお、名前相応に結構な効果だね……。」

「んで、使い方なんだが目に【闘気】集めて薄くビーム打つみたいな感じだ。イメージは空裂〇刺驚スペー〇リパー・スティン〇ーアイズの広範囲版みたいな感じだ。」

「ぶっ!」


 わかりやすいと思うたとえを出したら。ヤクモが突然吹き出しプルプル笑いをこらえるよう…と、いうか笑いをこらえている。


「急にジョ〇ョネタ出さないでよwww……。」


 面白いかなぁ……と、思って行ってみたが意外とうけたっぽいな。


「お!やっぱ知ってたか?じゃあ、イメージはできるな?」

「わかった、やってみる……【仙術:邪眼・苦】!」

「⁉ぎゃぁあぁぁあああああぁぁぁぁあああ‼……。」

「うわ!すご!」

「感心してる場合か!目ぇ閉じろ!」

「あ、ごめん。」


と、目を閉じ俺は今まで食らったことのない苦しみから解放され、とてもすがすがしく爽やかな気分となった。まるで、新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のような気分に……じゃねえよ!

 まさか、ヤクモの【邪眼】一発目の犠牲者が俺とは思わなかったよ!


「ふう……まあ、これであとはヤクモの流派を作るだけだが、とりあえず流派名でも考えるか?」

「うん。あ、そうだ!せっかくだしいろいろ案を出して視聴者さん達に決めてもらってみるのはどうかな?」

「ああ、そういえば配信してたな。すっかり忘れたたわ。」

「もう、お兄ちゃんったら……。」

「すまん。そんで、いいと思うぞ配信者らしくて。」


 そうして出た案は、

・八雲流

・子猫流

・にゃんにゃん流

・雲猫流

猫猫まおまお

・猫叉流


 なんか、猫要素強くね?と思ったが、そもそもヤクモは怪異族の猫叉種だった。  

 そういえば、まだ容姿の説明をしていなかった(誰に対する説明だというう突込みは受け付けておりません)

 体格は、小柄で今の神族としての俺と同じくらいの身長でその体格によく合う童顔でとても整っている。金髪で童顔ではあるがやや釣目気味な蒼い瞳を持っている。そして、顔の両側頭部より上の位置から生えた大きな猫耳と腰のあたりから生えた猫叉である証二股のしっぽ。一言で言えばあざとい容姿押している。


「はい、案はこの六つが出ました!これからXクロスのアンケートで決めてもらいます!制限時間は今から三〇分、皆投票よろしくね~!」


 それからきっかり三〇分後


「はい、それじゃあ投票の結果八雲流に決まりました!それじゃあ投票を待ってる間に考えた。あたし流の仙術を見てもらうよ!」


と、そこでヤクモが目をつむり……


「【八雲流仙術:曲解きょっかい】【仙術:邪眼・呪】……【八雲流仙技:曲所収束きょくしょしゅうそく】」


ヤクモの仙術と仙技を発動させた。そして、俺があらかじめ用意した【岩案山子】が一瞬で溶けた。


「うわぁーお……。」



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 はい、これで残る弟子の種族は幻獣種です。どんな人が出てくるのでしょうか?

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