第七話 弟子探し ムゲンの刀匠(前編)

「さあってどいつを弟子にしようかなぁっと。」


 【ホムンクルス】の製作とは別にやることができヤシロにそっちを優先しろといわれたので俺の仙術を習得するに相応しい人材を捜して回っている。

 途中に襲い掛かってくるエネミーを瞬殺しながらあたりを物色して回る。

 ちなみにこれは【社流仙技:蜃気楼しんきろうまわ灯篭とうろう】という技で名の通りヤシロが編み出したものだ。

 これは【社流仙術:偽物】とヤシロが新しく生み出した【社流仙術:黒光こっこう】そして【社流仙術:黙流もくりゅう】の三つを組み合わせたもので、偽物は五感情報を偽らせることができ。黒光は黒い光という闘気から生み出されたよくわからないオーラを纏わせ刃にする。黙流は極限まで足音を消し闘気で見えない道を作りそこを通るというものだ。

 黒光と黙流のみを合わせた【社流仙技:灯篭流とうろうながし】というのもある。【社流仙技:蜃気楼・廻し灯篭】は偽物で見せたデコイとは反対方向から灯篭流しで切るっという技だ。もちろん、【アカシックレコード】にはヤシロ名義で登録してある。ヤシロが作った流派なんだから当たり前だ。


〔マスター、何人ほど弟子を作るご予定ですか?〕

「うーん、そうだな‥‥‥四人くらいの予定だけど‥‥‥。」


 なかなかいいプレイヤーが見つからないんだよなぁ‥‥‥て、ええ!?

 途中から雑魚エネミーを倒すのがめんどくなってきたので縮地で近場を移動しながら、弟子を捜しているととんでもないものを見つけた。


「な、なあヤシロ‥‥‥あれ何?」

〔わ、わかりません‥‥‥ただ、運営が作ったものではなく、プレイヤーが生み出したものだということは断言できます‥‥‥。〕

「‥‥‥その心は?」

〔‥‥‥こんなものを運営が作ったという記録はありません、それに【AW】プレイヤーは元から所有している土地への地形変動の権限を持っています。〕

「マジかよ‥‥‥。」


 俺たちが見たのは空中に浮かぶ都市だ。

‥‥‥そういえば、こういう時に言ってみたいセリフがあったな‥‥‥。


「ラ〇ュタは本当にあったんだ!」

〔マスターふざけないでください。〕

「すみません。」

〔で、どうしますか?マスター。〕


 いろいろ考えた結果‥‥‥行くっきゃねえ!と、いうことになった。

 だって面白そうなんだもんよー‥‥‥空飛ぶ都市だよ?ラ〇ュタだよ?行くっきゃねえだろ!


「天歩はもうできるよな?」

〔はい、コツはだいたいつかめましたので‥‥‥。〕

「よし、行くぞ。」


 俺たちは、空中を歩き空中都市に侵入した。

 空中都市の敷地に入った瞬間けたたましいブザーが鳴り響き


〘【黄泉ノ工房】への侵入者を感知しました。これより【侵入者迎撃システムPhase1】を五秒後に起動します。〙

「‥‥‥へ?」


ヤタノカラスのようなシステムボイスが聞こえた。

 その声の後、きっかり五秒後に城壁のような壁が展開された。これが空中都市———いや【黄泉ノ工房】といっていたか?———の防衛機構、【侵入者迎撃システムPhase1】なのだろう。


「つっ!‥‥‥。」

〔マスター⁉〕


軽く触れてみると激痛と熱を感じた。見てみると俺の手首から先が溶けるように消えていた。


「くっ!‥‥‥【仙術:養老・てnいや…界】!」


 一応万が一のために範囲回復型の養老を使う。すると瞬時になくなった手が復元されていく。


「ふう、かなりやばい壁だな‥‥‥【仙術:真眼】」


【ホムンクルス】を作るのに役立った目、【仙術:真眼】これは物体の透視だけではなく、俺が欲しかった動体視力の上昇と視覚に入った対象のある程度の情報を把握することができる解析能力を持っていた。

 これでわかったことは、このウォール〇リアみたいな壁にはそれぞれに何らこの効果を持った複数のバリアみたいなものに覆われていた。その中には物理攻撃への耐性や触れたものにダメージを与える効果が付与されているものもあった。これが俺の手を溶かしたものの正体だろう。


「ふむ‥‥‥音を遮断するような効果が付いたものはないっぽいな、これならいけるかな‥‥‥【仙術:部分強化・声帯】。」


 俺は部分強化で声帯を強化する‥‥‥部分強化もう少し格好いい名前つけるか、えーっとそうだな‥‥‥よし、これで行こう。


〔マスターいったい何を?〕

「スー‥‥‥。【仙術:部位強化・声帯】改め‥‥‥【仙術:万象響振ばんしょうきょうしん】」


俺は肺いっぱいに空気を吸い。


「‥‥‥—————————————ッ!」

〔っ!〕


 ヤシロが俺に質問の言葉をかけるが、今は時間が惜しい。俺は全力で叫び声をあげる。それもただの叫び声ではなく超音波に近い高音だ。こんなこと【マテリアルボディー】じゃできなかっただろう。

―――【マテリアルボディー】とは今の【アストラルボディー】ではない元の生身の身体のことである―――

 その音の反響を俺は耳を澄ませってじっくり聞き分ける。


「‥‥‥よし、大体わかった。」

〔マスター?〕

「ヤシロ、とりあえずここの構造の大方は把握できた。」

〔マスター、今何をしたのですか?〕

「音の反響を利用してこの【黄泉ノ工房】の内部構造を調べた。」

〔なっ!‥‥‥。〕


 俺は生まれつき耳がいいそれは俺の肉体の成長とともに聴覚の制度もどんどん上がっていった。小学生の時は意識せずとも人の小声をクリアに聞くことができるほどだった。

 そのせいで悪口なんかもしっかり聞こえてしまい当時メンタルが弱かった俺は学校が嫌いになった。今でこそ聞き取りたい情報を自分で制御できるが、あの時はかなり苦労したなあ‥‥‥。

 そうしみじみに思う‥‥‥そして今は、意識せずとも超音波すら聞き取れるようにまでなったのだ。気づいたのは数年前、夜中に散歩をしていた時だ。聞きなれない高い音が聞こえ、その方向を見てみれば小さな蝙蝠を見つけた。俺はその音が蝙蝠のエコーロケーションのために発生させた音だということがわかった。

 俺はまさかと思い、ネットで超音波を発生させる機会を購入し届いた初日に使ってみるとなんとある程度ものの配置を覚えているとはいえ自宅の内部構造が目をつぶっていてもわかるようになってしまった。

 俺は、それからエコーロケーションの練習をしてマスターした【AW】でなら術を使って人体から出せる以上の音を出してデカいこの【黄泉の工房】に内部構造を把握した。


「壁に張ってあるバリアの性能もわかったしこのウォー〇マリアをベル〇ルト君みたく破壊しようと思う。」

〔マスターいい加減にした方が身のためかと‥‥‥。〕


?まあいいか‥‥‥。

 俺は筋骨隆々な悪魔族に変身し全力の攻撃を放つ体制に入る


「【仙術:柔腕の型】【仙術:柔脚の型】【仙術:養老・纏】【仙術:重金体】【仙術:気流砲】あとは‥‥‥【耐性結界】‥‥‥【仙技:仙鬼柔弾・激流】!」


全力の柔弾で壁に亀裂を入れもろくする。バリアからのダメージは即興で生み出した術で無効化している。


「か~ら~の~‥‥‥【仙術:剛腕の型】【仙術:剛脚の型】【仙術:堅牢】‥‥‥【仙技:仙鬼剛撃・重鎧】!」


剛撃で亀裂の入った崩壊寸前の壁とバリアを一気に破壊する。


〘【侵入者迎撃システムPhase1】が破壊されました。続いて【Phase2】を起動します。〙


 また、警報とシステムボイスが鳴り響いた。

 そして、壁の向こう側から大小さまざまな動く人形、ゴーレムを湧き出てきた。


「ちっ!やっぱりか!」

〔マスター、どういたしますか?〕

「もちろん‥‥‥殲滅する。」


 俺はこうなることを見越していたので、壁の破壊前にヤシロに話してある。すでに、敵対象のゴーレムの殲滅に取り掛かる。

 俺は、【仙鬼長杖:貪炎】と【螺旋水槍】と同じような術、総称で【螺旋槍術】と呼んでいる。貪炎で近くの敵を薙ぎ払い【螺旋槍術】で遠くのゴーレムを一掃する。‥‥‥広範囲殲滅系の術を考えるか。


「‥‥‥【火災旋風かさいせんぷう】!」


で、生み出したのがこちら【火災旋風】です!【螺旋炎槍らせんえんそう】を突き立てさらに神通力を流し込み回転速度とサイズを上昇させるだけ。超単純な術で【螺旋炎槍】さえ使えれば超簡単!制御に魂氣を結構使うかのが難点だけどネ!


〔‥‥‥。〕


対するヤシロは、【社流仙技:灯篭流し】で認識外からゴーレムの核を最小の動きで破壊する。その動きはまさにアサシン‥‥‥戦闘は考えてなかったけど、あとで少し調節するかな。

 別の衣装も用意してみるか。

 そうして、そこまで時間をかけずゴーレムすべてを殲滅することに成功した。


〘侵入者迎撃システムPhase2が破壊されました。これよりFinalphaseを実行します。〙


お、ファイナルって言ったなよし!


「ヤシロ!ここの中心部の座標を調べてくれ!」

〔了解しました。ですがその間私は戦闘に参加できませんが、よろしいでしょうか?〕

「ああ!大丈夫だ!」


さーて、何が出るかな?

 侵入者迎撃システムFinalphaseは一体の全長三メートルほどの中型ゴーレムが出てきた。ちなみに小型のゴーレムは全長二メートルが最大、大型のゴーレムは全長五メートル以降のサイズを表すらしい。


「【Phase2】に出てきた大型よりは小さいが‥‥‥っ!」


 思ったよりも早い速度で中型ゴーレムが殴りつけてきたが今は【仙術:真眼】を常時発動しているため、防御態勢に入った。【仙術:柔腕の型、柔脚の型、剛腕の型、堅牢、養老・纏、瞬動】を同時発動して受け止める。


「て、重⁉【仙術:重金体】!」


え?何こいつ、何でこの重さでこんな速度で動けるの⁈と、言うかヤバイ!ヤバイ!

 急いで重金体を発動し全力で踏ん張る。

‥‥‥これは、避ける方が楽だな。

 ヤシロに拳が飛んでいかないように、ゴーレムの拳を受け流す。貪炎はしまっておくか‥‥‥。


「よっ!ほっ!‥‥‥はっ!よし…て、うお!」


 ゴーレムの攻撃をなるべく余裕をもって避けていると背後から矢の攻撃が来た。


「あ、危ねぇ!」


 なんつういやらしいタイミングでの不意打ち。ここ創ったやつはかなりいい性格してるな‥‥‥なんだ?


「【仙術:真眼】」


 目に何らかの違和感を感じもしかしたらと真眼を重ね掛けしてみるが、特に何も変わらない。

 おそらく何かが違うのだろうが‥‥‥。

 その時、頭の中で何かカチッと音が鳴った。まるでかけたパズルのピースがはまるように、


「【六神通ろくじんつう天眼てんがん】!‥‥‥⁈」


 そして、俺の意識とは別に口が勝手にその術の名を唱えた。

 その時、視点がまるでゲーム画面のような三人称視点になりゴーレムの動きが真眼の時よりもさらにゆっくり動いているように見えた。

 いや、それどころか視界に映っている物体の動きがぶれて残像のようなものが見え、物体の本体がその残像?の軌跡をなぞってまったく同じ動きをする。

 それは、ゴーレムも例外ではない。

 これって‥‥‥未来視、か?


「ククッ、ククク!‥‥‥クハハハハハハハ!」


 いいね、面白い!四方八方をノーモーションで見ることができ、動体視力も上がり、少し先の未来を見ることができる‥‥‥だが、それでゴーレムの動きが鈍るわけでもない、避けに徹するのは変わらない。

 くそ!何か大きい隙を作れる術を‥‥‥。


「【仙術:邪眼じゃがんばく】!」


 新しい術を生み出し使うすると、ゴーレムの動きがわずかにだが鈍る。時間がたつと心なしか動きがどんどん鈍くなっていき、動きがはとんど止まり未来視でも数センチほどしか動いていない。


「よし、うまくいった!‥‥‥【仙技:仙鬼柔弾・激流】!」


 硬そうだしな‥‥‥ただの打撃技よりも浸透するタイプの技の方がいいだろう。ゴーレムの堅い装甲が砕け、ヒビだらけの核が露出する。


「【仙技:仙鬼剛撃】!」


 壁を壊したのと同じように剛撃でゴーレムの核を完全に破壊し核を失い壊れかけたゴーレムは完全に動きを停止させる。


〔マスター、【黄泉ノ工房】の中心部の座標を特定しました。座標は‥‥‥‥‥‥です。〕

「わかった!行くぞ?」

〔はい。〕

「〔【仙術:縮地】〕」


 ヤシロから聞いた座標に向かって縮地で飛ぶ。



―—————————————————————————————————————

 どうも酒井剛一です。

 こういう、あとがきのようなものを始めて書いてみました。

 今後ここでは、何か質問があればそれに対する答えや本編にはあまり出な死に設定になりうるであろうものなどを書いていこうと思います。

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