【ホムンクルス】製作日記・後編
ヤシロの身体が完成して五日後、今日は再現した嗅覚を試すために目途が立っている食材アイテムを取りに行く。
「さて、どうやって向かうか‥‥‥。」
〔?いつも通り縮地を使えばいいのではないのですか?〕
「いや、それは思いついたんだけど‥‥‥お前、縮地使える?」
〔‥‥‥え?〕
実は、便利だと思っていた【仙術:縮地】には一つ欠点があった。縮地は現在地と目的地の距離を切り取り縮めるものだが、縮めた距離を移動することができるのは距離を縮めた本人だけだということがわかって、どうしたものかと悩む。
「バイク、の免許はまだ取れてないしな‥‥‥よし、予定変更だ!」
〔と、言いますと?〕
「今日はヤシロに仙術を習得してもらいます。それでヤシロにも【仙術:縮地】を一緒に使ってもらいます!」
〔なるほど、話は分かりましたが【ホムンクルス】はあくまでアストラルボディーを模倣しただけの物でしたよね?私の身体に魂氣はありませんよ。〕
「そこは大丈夫!戦闘を目的に作ったわけじゃあないけど、俺のサポートをするために魂氣を貯めた後、それを使える機能をつけてある。あらかじめ神通力を補充しておいたからそれを粘土みたいに練るイメージをしてみてくれそうすると自然に神通力が魂氣に変わる‥‥‥はずだ。」
途中まではよかったが最後に自信のない間を作ってしまった。
〔‥‥‥はず?まあやってみます。〕
と、ヤシロが目をつむり集中する。
〔‥‥‥‥‥!。〕
少しして瞑想していたヤシロに反応があった。どうやら神通力を闘気に返還することに成功したようだ。
「よし、じゃあ闘気を足にためて足の裏から一気に解放してみろ、それで【仙術:瞬動】が使えると思うぞ。」
〔はい‥‥‥!〕
闘気を十分にたまったところでヤシロの身体がぶれる。
そして気が付けばヤシロは俺の後方に移動していた。
「‥‥‥。」
きゃ、客観的に無ると結構なスピードだな‥‥‥もしかしたらこれと同じ速度で動ける屋圧も出てくる可能性があるな…動体視力を上げる仙術とかも作れるかな?それと生身の方の動体視力も上げる訓練もした方がよさそうだな‥‥‥生身とか素の身体と元の身体とかいううのなんか長いしダサいな、呼び名考えるか。
〔マスターどうでしょうか?〕
「ん?おう‥‥‥て、うお!」
俺がくだらないことを考えていると、いつの間にかヤシロが音もなく近づいてきた。
これはまさか‥‥‥
「隠形か?」
〔いえ、【仙術:隠形】をもとに作ってみたもので【仙術:
え?マジで⁈こいつ、新しく術作っちゃったの?もしかして、習得すればだれでも新しく術を創れるってことか?
‥‥‥あ、そうだ良いこと思いついた。
「なあヤシロ、お前仙術の別の流派創ってみねえ?」
〔別の流派?〕
俺が思いついたのは、何人かのプレイヤーに直々に仙術を教え、独自の流派に派生させるというものだ。俺が作った仙術を源流の流派だとするなら、弟子に向いた戦い方の仙術‥‥‥ヤシロだったらそのまま【
と、ヤシロに話してみると。
〔なるほど、それは良さそうですね。ちなみに、誰に仙術を教えるかは決めているんですか?〕
「‥‥‥大丈夫、βテストが終わるまでには見つける。」
〔ちょっと!それ後一週間じゃないですか!〕
「‥‥‥。」
〔目をそらさないでください。〕
「‥‥‥‥‥。」
「仕方ないですね‥‥‥しばらくはまだ味覚の再現はいいので、お弟子さんを見つけてください!いいですね?」
「はい!」
いやぁ‥‥‥ヤシロ先生は怒ると怖いなあ。
ちなみに、ヤシロの先生呼びは嫌がられたのでやめている。
そして、ヤシロの流派は一番最初に挙げた【社流】になりました。
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