第一話 新型ゲーム

 二〇三〇年某日その日はとある新型ゲームのβテスター当選者を集めた説明会があった。

 俺もそのβテスターに選ばれ説明会に参加することになった。会場は学校の体育館三つ分ほどの広さで中央にはオープンステージが設置されていた。

 そして、ステージの周りは観客席のようになっており、そこにはざっと五〇〇ほどの人物たちが集まっていた。性別や人種は様々ではあるが、皆共通して機械的な造形をした指輪をつけていた。

 俺も例には漏れずその指輪をはめていた。


「諸君、よく集まってくれた。今日は我が社で製作された新型ゲームハード及びゲームソフトのオープンβのテストプレイヤーとして来てくれてありがとう。」


ステージの中心に一人の男がたっていた。

「知っているだろうが自己紹介をしよう。私は風間コーポレーションの社長、風間響だ。これから諸君らにあらかじめ送っておいた新型ゲームハード【スペクターリング】に一斉にソフトをインストールする。その後、新作新型ゲーム【Astral・Warriors】の説明をする。」


 そして、会場にいる五〇〇名の指輪スペクターリングから一斉にインストール完了の通知音が流れた。


「うん、無事に終わったようだね。それでは、このゲームの説明をしよう。」


 そして、風間社長の説明が始まった。

 そのゲーム、Astral・Warriorsとは人の意識を身体から切り離し科学的に幽体離脱を行う最近開発された新技術を応用したゲームだそうだ。意識を仮想世界に移すフルダイブ型VRゲームはあったが意識を身体から切り離し現実世界に顕現させるのは初めての見込みであり、危険はないのかなど質問を投げかける者もいた。

 その問いに対する答えは、


「確かに危険がないとは言い切れません、ですがそれはどんなことにでもいえることです。現在も市販されているフルダイブ型VRゲームもいまだに安全とは断言されていません。この新作ゲームにも危険がある可能性は確かにあります。安全機能にはかなり気を使っていますが一〇〇パーセント安全とは決して言いません、それでも九〇パーセントの安全は確実に保証いたします。」


だそうだ。

 風間社長の絶対的な自身と気迫からざわつく者たちがいなくなり、会場は静まり返った。

 それから説明が続いた。今度は、ゲームAstral・Warriorsの具体的な仕様である。

 今作の舞台は、意識(このゲームではアストラルボディーという)を現実世界に顕現させるという関係上自分たちがいる場所すべてがプレイヤーたちの交流の場でありであり対戦フィールド。アストラルボディーを現実世界に顕現させるといっているがそのアストラルボディーが実体を持っているというわけではないため設定次第ではアストラルボディーの姿を見せることも消すこともできるらしい。

 そして、実体を持っていないためゲームに登場するアイテムしか持つことができない。現実に元から存在するものに触れるならある程度のコツをつかまなければ無理でそれは相当難しいそうだ。実体がないから質量も存在せず地面に沈むこともないらしく、体を動かす際はある程度思いどうりに動かすことができる。

 また、そのゲームに数値上のレベルは存在せず身体能力に関しては本体の十倍になっていて、プレイヤースキルとイメージが物を言うゲームだ。

 結構、いやかなり面白そうだ。


「簡単な説明は以上だ。長々と話を聞くよりも君たちゲーマーは自分たちで試して考える方が性に合っているだろ。生きと帰りの交通費はこちらが負担している観光してからでもよしそのまま直帰でもよしだ。それでは、これにて風間コーポレーション新型ゲームの説明会を終了する。」


 その言葉を合図に会場に集まったゲーマーたちは席を立ち和気あいあいと帰路に就く。

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