第5話 開かれた扉
ユミコの心は混乱し、興奮していた。ここ数日、外界からの刺激をほとんど受けず、劣悪な環境にいたことで、すっかり心がすり減り、感情の起伏がほとんどない状態になってしまっていた。
だが、先ほどのお盆から放たれた輝きは荒んだ心をも揺さぶる尋常でない美しさを持っていた。でもユミコ自身は何のとりえもない、魔法などとは無縁の世界にいた人間だ。それが何を示しているのか、何を意味するのか、ユミコには分からなかった。しかし、ローブを着た男性たちの驚きの表情が、それが何か重要なものであることを示していた。
孤立と不安の日々がまだ続いた。部屋の外で何が起きているのか、彼女には何も分からなかった。しかし、男性の最後の言葉が彼女の心に希望の灯を灯した。
「もう少しだけ我慢していて。かならず迎えにくる。」
ユミコはその言葉を繰り返し自分に言い聞かせた。
最初の数日の終わりの見えない状況よりははるかにましだった。時折、部屋の外からはざわつきや怒鳴り声が聞こえてきた。それが何を意味するのか、ユミコには理解できなかった。だが、ちょっとした物音にもあの女性ではないかと期待してしまい、何もないとそのたびに深く落胆してしまうのだった。
そして、ついにその日がきた。ユミコがベッドに横たわって、小さな窓から空を見上げていると、部屋の扉が勢いよく開き、ユミコを迎えに来ると言った男性が一人で現れた。
ユミコに微笑みかけながら近づき、やさしく手を差し伸べた。「ごめんなさい、待たせてしまって。さあ、ここから出ましょう。」さしだされたその手を、ユミコはしっかりと握り返した。
そして、その部屋を後にした。ユミコは最後にちらりと振り返り、その粗末なベッド、その汚れた壁、そして、その部屋で味わった恐怖と孤独を思い出し、二度と戻ってきたくないと心から思った。
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