第4話 魔法適性試験
彼女が連れて行かれた場所は見るからに汚れていて、埃っぽく、ただの粗末なベッドが置かれているだけの部屋だった。
男性たちは彼女に、「ここで処分が決まるまで待っていろ。」と指示した。
それから数日が過ぎた。最初はあまりに汚らしい部屋のものに触るのも嫌だったのだが、すっかり衛星感覚がマヒしてしまっていた。そして、その期間中、ユミコに与えられたのはパンと薄いスープのみだった。ずっと空腹が続いたことで、頭はぼんやりとしていた。
部屋の世話係は、彼女の方を見る気もなく、話しかけられても面倒そうに顔をしかめただけだった。ユミコは助けを求めることを諦め、憔悴しきっていた。
そんなある日、外の騒ぎで目を覚ましたユミコ。急に部屋に三人が入ってきた。そのうちの二人は真っ黒なローブを身に纏っていた。一人は青い目をした親しみやすそうな人物で不思議なお盆を手に持っていた。そして、もう一人は不思議な面をまとっていて、異様な雰囲気を漂わせていた。
「この部屋にいるのは、昨日、呪いの井戸の付近で発見された身元不明の怪しい人間だから、この検査は必要ないと思うが…」と、一人の男性が困りながら述べた。
しかし、青い目をした男性は即座に反論した。「この検査はこの国にいる全てのものが受けるもの。この方も例外ではない。」と、彼は断固とした態度を見せた。第一印象からすると意外な、その毅然とした態度に男性もひるんだ様子だった。
お面の男性が杖を振ると、机と椅子のセットが現れた。ユミコは初めて見る魔法に驚いた。
そして青い目をした男性はお盆を大事そうに机に置き、ユミコに近づき、椅子に座るように促した。
「初めまして。今からあなたの魔法適性をチェックさせてもらいます。このお盆の中に息を吹きかけてもらえるかな?」
「でも、私魔法なんで使えないと思います。」
そういっても男性はにっこりと笑うだけだった。
しかたなく、ユミコは言われるがままに息を吹きかけた。
すると、寒い日に外で息を吐いた時のようにお盆の上で吐息が色を変えた。そしてそれはキラキラと光り輝いた。
「これは…」
そう言って黒いローブの2人は目を見合わせ、何かを密談し、急いで部屋を出て行った。部屋を出ていく時に青い目の男性はにっこりとユミコに微笑んだ。
「もう少しだけ我慢していて。かならず迎えにくる。」
そう言い残し、ユミコは再び部屋に1人取り残された。
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