第30話 お菓子とジュースとゲーム
声がした。リビングの方から。
今日は大吾の家には誰もいないはずだった。だからお互いに同じ時間に仮病使って学校を早退してきた。
”やばくね?”
ちょっと良い子ちゃんぶってしまう。
大吾が恐る恐る声の聞こえたリビングへ行く。
どうやら大吾のお姉さんがいたらしい。でも、一人ではなく友達も一緒?大吾の背中から様子を伺う。
「姉ちゃん…今日、休んでんの?」
お姉さんが休んでること、大吾は知らなかったんだ。
「あんたはどうして?」
リビングからは小さくか細い声で答えが聞こえる。優しそうな声。大吾も小動物系な可愛さがあるから、お姉さんもそんな感じなのかな?優等生で大人しいって言ってたから、清楚な感じを妄想する。俺、けっこうそういう人タイプかも。
「こんにちはー、あれ?ああ彼氏さんだ。」
お姉さんの彼氏が来てるってこと?それって・・・俺たち邪魔じゃね?しかも、大吾、彼氏さんと面識あるみたい。
”お姉ちゃんめっちゃまじめ人間だから面白くない”
なんて言っていたけど、親がいない時に彼氏を家に呼ぶなんて結構やるじゃん。
「学校サボって男連れ込んでんの?しかも二人も!」
えっ?彼氏といちゃついていたわけじゃないんだ。友達と一緒にって・・・ちょっとドキドキしたのにがっかり。
「おじゃましています。菜穂さんの具合が心配で、さっき来たんです。でも、一人ではよくないと思って、友達と…。な」
なんだか聞き覚えのある声。
「そうだったんですね。じゃ、ごゆっくり~」
大吾がそう言って、リビングのドアを閉めようとしたけど、さっきの声の主が気になって大吾の肩から少し顔を出して覗く。
「兄貴と心晴くんじゃん」
驚いた。驚くよ!だって、大吾の家で兄貴と会うなんて・・・それに心晴くんもその場にいるなんて。
びっくりしすぎて顎がはずれてしまいそうなくらい口を開いて間抜け顔になった。
「俊、おまえ…なんでここに?」
それはこっちも同じ事を聞きたいよ。
俺たちはリビングに入り
五人で話をすることになった。
聞くと、大吾のお姉さんが学校を休んでいたから二人でお見舞いに来たって。それって不自然じゃね?休むだろ・・・たまには。メールとか電話したらいいじゃん。わざわざ家に来るか?家に彼女一人だったから来たとか?それだとしたら、男二人で来るのも変だし・・・これはなんかあったよな。
「昨日さ、裕翔くんとは会ったんだよ。家の前で…ね。」
大吾が言うと、兄貴は俺には見せたこともない様な優しくほほ笑みで頷いた。
なんだよそれ!よそ行きのむかつく笑顔。
「えーそうなの?兄貴が最近おかしくなっちゃってる相手って、大吾のねーちゃんなの?ウケる~」
俺がふざけた口調でそう言うと、兄貴はさっきまでとは違い、殺し屋の様な眼でにらみつけカバンを投げつけてきた。
「黙れ」
そして、一喝。マジの目だ。
「わ~こえぇ。黙っとこ」
そう言って自分の口に手を当てた。でも、このシチュエーションおもしれー。
「でもさ、安心した。心晴くんとまた仲良くなったんだね。俺さ、心晴くんの事も本当の兄貴みたいに思ってたからさ、二人が仲悪くなってマジで嫌だったんだよね~。」
心晴くんは昔から変わらない。マイペースな笑顔で俺にほほ笑み、頭を優しくポンポンとしてくれた。
「俊輔はかわいな…有り難う。僕も俊輔の事を本当の弟だって思ってるよ。」
嬉しかった。久々に会ったのに、何にも変わりはなかった。心晴くんもう元気になったんだね。俺はそれが本当に嬉しかった。
俺は大吾のお姉さんの方を見た。静かすぎて存在を忘れていた。そしたら、直ぐに・・・。
”そっか”
自分の中で勝手に腑に落ちた。
今日ここに兄貴よ心晴くんがいる理由・・・なんとなく分かった。
それに親友が何かを勘づいた様子でこちらを見て、
「どした?」
そう聞くけど、言えない。一言では言えない。それに、俺が勝手にそう感じているだけかもだし・・・。でも俺の感じたものは当たっていると思うよ。
だとしたら、切ないなって思ってさ。
「何でもない。」
そういうしかできなかった。大吾はそんな俺の雰囲気を読み取ってくれたのだろうか?
「じゃ、ごゆっくり」
なんて言いながら、リビングを出た。
何度か振り返りながら、俺と大吾は大吾の部屋に向かった。
階段で、
「俊輔・・・なんか隠してんな」
そう言って笑いかけてきた親友。
「まあな」
そうはいったけど、それ以上聞いてくることはなかった。俺たちはさっきまでの事はなかったことにして、大吾の部屋で買ってきたお菓子やジュースを広げ、ゲームパーティーをした。
でも分かってるよ。
お互いに何か気になってしまっている事。
ごめん親友。今は言えない。
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