第23話 訪問者

心晴は丁寧に靴を並べ、


「おじゃまします」


と、家に上がり込んだ。私もどうしていいか分からなかったけど、“ダメ“とは言わなかった。


「菜穂の部屋はどこ?」


そう言って、キョロキョロする。

部屋にはいるの?どうしよう…散らかってはないけど、他人を入れたことがないからな…。


そうこうしていると、心晴は私の部屋を指して、


「ここだ!」


と、言い当てた。

私が驚くと、


「ドアの真ん中に“なほ“って書いてあるよ」


と、こちらを見てニッコリ。

そうだった、ママが部屋に付けてくれたどこかのお土産のステッカーに名前も書いてあったんだ。

しかも、たょっとダサめ。


「へー菜穂ってこういうのが趣味なのね」


そう言って部屋を開けろと言わんばかりに、ノブを見て催促する仕草で目配せする。勝手にあけたりしないんだ・・・デリカシーはある人なんだと少し安心し、


「どうぞ」


そう言って、ドアを開ける。


部屋に入ると心晴はベッドを背もたれにして座り、こちらに手招きをする。私は、テーブルをはさんで向かい側に正座する。


「緊張するなよ~。足、崩していいからね」


そう言って、屈託のない笑顔を見せたけど、ここは私の部屋なのですが・・・と、疑問にも思えた。


「どうして学校途中で抜けてきたの?」


私が聞くと、一瞬ためらって、


「昨日の事さ、なんだか皆にばれちゃってさ・・・結構大騒ぎでね。菜穂はどうしているかな?って思ったら、休んでたから、心配になっちゃって会いに来たよ。」



どういう事?知られてるの・・・皆に。”どうして?”と、思った瞬間、さっきの双葉さんのメールの意味が分かった気がした。

だけど、昨日の事は何もやましいことなんてない。


「どこからともなく涌き出た噂にオビレハビレ付いちゃってさ、なーんか僕たち“付き合ってる“って、感じになっててね。」


エッ、困る。

こんなに困ること、心晴はどうして笑顔で話しているの?


「そうなったのは、僕のせいで…かもしれないから、菜穂に言っておこうって思うことがあってね。」


何を言うの?

なんで、心晴のせいなの?


「女子から聞かれてさ、“どうなの?“みたいなこと言われてさ、“僕は好きだよ“って、こたえてね。それで噂が“ばー“って、広がっちゃってね。」


どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。


どうしてそうなるの?


裕翔くんはどう思ったかな?


嫌な思いしたよね。


その時、スマホがなった。私と心晴はスマホの画面を同時に見る。裕翔くんからだ。


私が出ようとてを伸ばしたら、心晴が奪うようにスマホに出た。


「もしもし」


「… …」


「あれ?なんにも言わない。イタズラかな?」


そう言って、切ろうとすると、


「なんでお前が、菜穂ちゃんの電話にでんだよ!」


ヒシヒシと伝わる、裕翔くんの怒りの声は、向かえに座る私にも聞こえてきた。


「一緒にいるからだよ。」


ヒョウヒョウとした態度で、心晴はニッコリ笑ってスマホを切った。


どういうつもりなの?

私は、ただただ動揺し、言葉もでないであて。その状況を、みつめていた。


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