6 終局
「南アフリカです…………」
データ解析班の声が悲しく木霊した。ゲームは終わったばかり。すべての者が若い命が失われた余韻に動けずにいる。
漂う血の向こうでサメに喰われていく残骸を、痛みを伴いながら見た。
「くそっ」
こんなに胸くその悪いことはなかった。
デスクを蹴ると写真が舞った。静かに床に広がる。それをインテリが拾い集めてデスクに戻した。
「まずは証拠集めです。そのあと関わった人物を洗い出して、犯人の身元を特定して、それから……」
「分かってる! お前冷たいぞ!」
自分でも可笑しなことを口走っていると思った。感情的になるべきではない。
分かっている、でも。
「それでも、あの子はまだ高校生なんだぞ」
泣いている親を見た。友人を見た。そういうこととは切り離せないことだった。
「悔しいのは同じですよ」
そういってインテリはデスクに写真を戻した。
失われた顔を1つ1つ見つめる。
高木勝利、森山亮、奈津美夫妻、永山堅持。そして佐久間梨乃。
彼らはどこへ散った。知らない国でなにをした。それでも生きているものがいるのか。
周囲のものの証言と、歩いて集めた証拠と、動画が投稿された4台のパソコンと。
佐久間梨乃が口にしたキジマという名前。
拳を白けるまでにぎりしめる。絶対に捕まえる、これ以上の犠牲者を出さないために。
感情がひりついていた。
「絶対に許さねえかんな! 絶対に」
怒号も今は虚しい。叫ぶことでしか、反意を伝えられない。受け止めるもののない怒りが落ちてゆく。
そして、浅井刑事の決意の裏側で、南アフリカでは事態が新たな局面を迎えていた。
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