これです、と笹埜はノートパソコンを開き、画面をこちらに向けて見せてくる。


「おまえな……ネットから拾ってきたかもしれない画像なんか気にしてどうする」

「でもこれ、被害者のスマホで撮られた画像なのは確かなんですよ」


 笹埜が、被害者と呼んだのが気になった。


「松永さん、記憶の改竄かいざんってあると思います?」


 画面上には真っ暗の空間を、限界まで明るく調整した画像が表示されている。

 白っぽく色が飛んだ色彩のなかに、正体不明の大きな輪郭が写っている。

 中央に、人の丈よりは一回りは大きい固まりがある。フェンスの向こうに盛り上がって、編み目から粘土が流れ出たかのように流れ出している。背景には鬱蒼とした木々が並ぶ。

 固体がとろけだしている。まるで肉塊が崩れたような表面をしていた。木の根のように枝分かれしたものが這い出しており、血管のようにも見える。


「なんだ、これは」


 もう一枚には、極限まで明るさを調整しても黒い楕円形の物体が写る。すっかり色が抜けた手のかたちに握られている。

 縦に角が立ち、何かの種子にも見える。

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