松永は、オカルトを信じる気はないが、と苦々しく発した。


「死にたい人間を呼ぶ、特有の場所ってのはあるのかもな」

「……呼ばれるんですか」

「さあな」

 死人が重なりゃ、噂を呼ぶ。

「死にたい人間が、死んでもいい場所だと思えばそうなる」


 間が開いた。笹埜はなにか考えている。しばし迷って、口を開く。

「あの敷地内って、自動販売機はないですよね」

「自動販売機?」松永はあきれた声を出し、眉を寄せた。「部外者は立ちれんのにか?」


 いやあ、と笹埜がこめかみを掻く。「あれだけの敷地を維持するのに、場合に寄っちゃ作業員用の自販機でも用意されてることもあるのかなと思って」

「馬鹿言うな、ありえんだろ」


 何十年も放置されている土地だ。いまや誰が所有者なのかもわからない。

 周辺は宅地開発されているのに、あの場所だけ時間が止まっている。


 だがそれも法改正された今、この土地も数年以内に売却されるだろう。利便性が良いだけに、宅地開発となるに違いない。そうなれば、辛気くさい話も霧消する。

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