指で示す写真には、有刺鉄線のついたフェンスと 鬱蒼うっそうとした木々が写る。草伸び放題の荒れ地で、マダニの生息地でもある。よほどの酔狂でもなければ立ち入ろうなどと考えないだろう。


 だが、夏休みに入ると羽目を外す連中が出没する。たまたま探検と称して、入りこんだ若い連中が第一発見者だった。


 現場には、きれいに衣服一式が畳まれ、靴も揃えてあった。服の上にスマートフォンと小型のノートが置かれていた。

 なんでこんなものがあるんだ、と近づいてみたら、足元に土竜モグラが盛り上げたかのような土のかたまりがあり、蹴っ飛ばしたら手首から先の骨がごっそり出てきた。


 驚くどころか、人骨の発見に大喜びしたらしい。

 立ち入り禁止の場所から声がする、と近所の住人が通報してきた。

 連中はフェンスの外からなんとか見える位置にいて、動画を撮りながら勝手に掘り返しているさなかに警察官が到着し、慌ててやめさせたという。


「まるで落とし穴に嵌まって、そのまま埋まった姿勢ですね」

 まあな、と松永が応じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る