発見されたのは、三十二歳の男性。一週間前に行方不明者届が出されていた。
発見された遺体には、不可思議な点があった。
地面が掘り返され、二メートル四方ほどの穴があいている。穴の側面に骨が見えた。細い縦穴に詰め込まれたかのように、直立の姿勢で発見されたのだ。
「埋めるために一回は掘り返してるはずなのに、そんな形跡もねえとか」
どうなってんだ、と白髪交じりの背広男が、ぶっきらぼうに言い放つ。
現場を確認して、署内に戻ってきた。朝から気温は高く、汗だくになった。室内は冷房が効いて、ほっとする思いだった。
白髪頭の男──松永が、資料をひとまとめにしたファイルを事務机の上に開き、背広姿の若い男──
笹埜は、松永の息子ほどの歳に見える。真面目で有能だが、まだ経験が浅い。
松永は渋い顔をして、資料の人物写真を眺めた。三十代前半で小太りの、いたって平凡な男。遺骨と同一人物かどうかはDNA検査待ちとなっている。
「それにしてもあの現場の状況で、よく発見されましたよね」
「あの辺はなぁ……、立ち入り禁止のフェンスが設置されてても、面白半分に中に入りこむ連中がいるからな」
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