第7話 魔法学園入学決定


王宮の端にある王立魔法学園、そこに試験無しで入学することになった。


帰る方法は宮殿にこそあるのかもしれないが流石にあのペコペコ頭を下げている王様が頑張って調べているようだし、王家の宝とか秘密まで見せろとは流石に言いにくいし国家機密とかもあるだろうしあまり無茶を言って友好的な現状を崩したくはない。


国元の賢者たちは「もっと調べてデータ送れ」だとか「何なら移住して生態系とか調べろ」と言ってくる……私の苦労とかも知らずに。


理屈はわかるし、他の人が同じ立場になったら私もそう思うかもしれない。が、当事者になれば地獄だった。ファーストコンタクトが悪かったからか、それとも立場を色々と脅かしているからか貴族たちには酷く恨まれているし、人間関係的にはものすごく住みにくい。国の頂点である王様は謎に低姿勢なのに不思議である。



「……はぁ」


「あまりそう悲観的になるな、父さんたちも手を尽くしているから」


「進展はあった?」


「あったが、そうだな……良いニュースと悪いニュースがあるがどちらから聞きたい?」


「私が帰れるニュースがほしい」


「………」



渋い顔をしている父さん、つまり帰ることは出来ないんだな。



「じゃあ、良いニュースで」


「こちらで王家の遺跡を探索したところ隠しスペースが出てきた。そこにこの騒動のことが書いてあった」


「なにそれ最高のニュースじゃん!!!??…………ん、まって、悪いニュースは?」


「地上の王家に伝承を伝えている、と、それだけだ」


「はぁっ…………チッ」


「舌打ちするんじゃない、まぁ気持ちはわからんでもないが」



通話を終了してふて寝する。やはり抗菌素材の素敵ベッドは良い……鳥の羽とか虫の死骸が入っていなくて最高だ。



―――1000年前になにかあったということはモルペウス王家の能力でなにか見た可能性がある。だからこちらの王家よりもモルペウス王家の方が情報を残していてもおかしくはないが……過去のどのデータベースを漁ってもそんな記録はなかった。


ただ私達の力には物を動かしたりするものはないしここに私を連れてきたというのは間違いなく地上の人間が犯人のはずだ。



―――――先祖は今もここを見てるのかな?



「御先祖出てきて説明しろやゴルァっ!!!!!!」



言っても何もないよね………。



「はぁ」



王家から魔法を学ぶ学校について記載された書籍が届いている。


貴族の子弟が学校に通って魔法を覚えるそうで、ここにしか無い魔法関係の書類があるのだとか……賢者たちも地上の高等教育に興味津々だしなにかの魔法で覆われていて賢者たちは入れていないから中を調べるのにちょうどいいようにも思う。……家も出来たばっかりで引きこもりたいんだけどな。


行った方がいい、行くべきと心で分かっているが………やる気でない。



「いくって決まってるんでしょ?ならさっさと行ってきな?」


「マーリ!」



あまり出来が良くないと言われている私をサポートしてくれる幼馴染、マーリ・ツージだ。完璧ガール、いや、完璧すぎる姉貴分で、私の最も信頼する将来の側近だ。



「私もそっち行くことになったからね、それまで頑張りな」


「すぐ来てくれないんだぁ」


「距離もあるからね、もう少し急げるけど」


「ゆっくり!安全重視で!何なら来なくてもいいから!」



ちょっと甘えてみたがマーリなら急ぎすぎて無理しそうである。



「私がいない間になんでこんなことに……ちゃんと食べてる?少し痩せたね?地上の貴族はちゃんと対応してくれてる?」


「ほんっと大丈夫だからね!!!??」



マーリは私が3年後の20歳、成人したらずっと腹心としてついてくれる予定だがそれまではいろんなことに挑戦していて……ちょっと遠くにいる。


ベッドで学校や規則に関する資料を翻訳して読むが頭おかしい、『決闘は紳士的かつ正々堂々に行うこと』するなするな、決闘なんてするんじゃない『緊急時以外は攻撃魔法を使用してはいけない』緊急時ってなんなの?!『学校に属する人間の売買をしてはならない』人を売るんじゃないし買っちゃダメでしょ『違法な魔法薬の製造と売買の禁止』………『学園内の争いを領地間の戦争に発展させてはならない』………………『構内における無許可の私刑の執行を固く禁じる』………………………やってた時代があるってことかな?



はぁ……なんか見れば見るほど行きたくなくなる。



今後は護衛のマシンがついてくれるから今よりも息はしやすくなるから活動はしやすい。


まだ時間はある、寝るかぁ………。






いざ当日、家を出て一歩目



―――やぱい帰りたい。


くるりと回ってもう一歩進めばそこは家。



「ダメですよ?行きましょう?」


「なんか体調悪くてぇ」


「平熱ですし脈拍・脳波全て正常です」


「ちっ」



昨日はごろごろ寝ながら護衛マシンを作ってた。ガチムチ威圧感マックスでも良かったがどうせなら可愛らしくした。


趣味全開で可愛らしい女の子、15歳ぐらいの見た目で光沢のある金髪にぷりっとした唇、ややおっとりしたタレ目で今時珍しい眼鏡、性格は賢者共に任せたがなかなか可愛く出来たんじゃないだろうか?



-はよ学校いけ-

-王宮と違ってマシンが入れない、気をつけてね-

-制服可愛いよ!-

-いまだかつてこんなダメな王女がいただろうか……-



「はいはい行ってきますよ!」



貴族の反応を考えるに足取りは重くなってしまうが仕方ないか 。

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