第5話 住処建築(王宮追放?)


王様には好きにしてもいい土地を聞いていた。


だって生活にどうしても我慢出来なかったんだ。


清潔感の不明な部屋に!何より安心できない住居にっ!!何よりも汚いトイレに!!!



なにかの魔法でいきなり拉致させられた私はそこそこ一等地の部屋を頂いた。もちろん見た目が悪いとかではない。何世代も前だが過去にここで伝染病で死んだ人がいたというデータがあったり……クリーニングしました?部屋を出ようとしたら外に虫やヘビの死骸が散らばってるような嫌がらせ、しかもこの国の貴族のトイレとは基本おまるである。汚物は使用人がもって行って流す………ムリムリムリムリ!!!!


仕方なく自分がトイレに向かうがまともとは言い難い穴式トイレ。本当に汚くて地獄だった。


この国の人間からすれば超科学力を持つ我が国からも即支援物資が送られてくることが決まった。しかし他国であり、物資の搬入には国境での検閲が必要と言われていた。


まぁそんなこともあるだろうとも思っていたがまさかの最低3ヶ月はかかると聞いて実家からの静止を無視してちょっと脅すことになった。



「お待ち下さい!現在重要な会議をしておりまして!」


「ここは通れません!」



静止する騎士を動けなくして会議場に入る。


偉そうな、いやきっと偉いお歴々が揃ってる中発言する。



「陛下、わたくしへの物資搬入を許可してください」


「何をいうかっ!!」

「未開の蛮族風情がっ」

「女の来るところではないぞ!!!」

「会議の最中にはいってくるなど常識がないのかね?」



何でも言ってください、いつでもどこでも話を聞きますと言ったのは王様だ。


もちろん大臣たちの揃う重要そうな会議中に割ってはいったのは常識外れだとはわかっていたがこの城の従者たちに王様の居場所や仕事を聞いてもまともな答えは返ってこなくて苛ついていたのだ。


グチグチグチグチと悪態をつかれて笑顔はなくなってしまった。


代わりに右手を水平に上げて王様の様子をうかがう。



「さっさとつまみ出し給え!」

「恥を知らないのかね?」

「これだから未開の蛮族は………陛下?」


「わかりました。今すぐ許可を出しますが搬入には余が立ち会いましょう」



一瞬見えたその瞳の奥の感情。彼にとって私は化け物のように見えるのだろう。


しかしその決断は叡智に満ち溢れたものである。じゃあすぐにまた呼び出さないといけないな。



「陛下っ!?」

「陛下!!こんな蛮族の」


「黙れ!これは王家同士の問題ぞ!!」



王様自身は私に逆らう気はないのだろう。なら他の貴族をもっと抑えてほしいのだが……まぁ仕方ないか。



「ありがとうございます、それでは失礼いたしました」



嬉しくて跳ね上がりそうになるが会議室を出……



「チッ」



後ろから聞こえた舌打ち、我慢できずに振り返ってその顔を見る。カイオーク大臣ね、覚えたよ。


ほんの一瞬固まる空気に私は笑顔で軽くこちらの礼を取って頭を下げた。


……まぁこれで使用権限をAIによる許可申請が必要になったわけだが後悔はしていない。




そういうわけで家造りだ。何もない、手入れもされていない鬱蒼とした森が王宮の敷地内にある。大きな丘のまるごとが王家のものだというのだから土地があって何よりだ……出られるようにしてくれるならもっと良いのだが。


そういうわけで『暗き森』をもらうことにした。別にこの森には何があるわけでもなく、単純に100年以上手入れしてないだけらしい。



「あーやっとまともなせいかつになるぅー♪」


「すいません、我が国の対応がよろしく無いようで……」


「できれば家に帰してくれるのが一番なんですけどねー、調査進んでます?」


「いえ、今のところめぼしい情報は出てきておりません」



王様だというのに呼ぶとすぐに来てくれて助かる。



「そうですか……」


「その、ここで何をどうするのでしょうか?なにもないようですが今日は下見でしょうか?」



広大な王宮の中でもこんなにも鬱蒼としていて華やかさとかけ離れた場所は他にはないだろう。どことなく暗い雰囲気を感じる森はそのまま『暗き森』なんて言われているが「好きにしても良い」「使われていない土地」で最も近いのがここだ。


整地された道から先は地面は歪んでボコボコ、大きな岩に蔦や苔が生えていて、見るからに整地しにくそうな場所だ。



「あー、ここに今から私の家作るんで」


「家?なら人をやって刈り取りをさせましょう」


「いーですよ、すぐすみますし……ほらきた、GOGO」



時間通り空から飛んできた物資の数々、モニタリングしていたし右手を上げて開始の号令をする。


これでやっと小型の空気清浄機しかない部屋と目的地の往復生活から解放される。着の身着のまま強制的に来た私の体内には緊急時のピコマシンを使っていたわけだが攻撃や食べなくても済むだけのカロリーへの変換、免疫システムの調整、そして空気の清浄にほとんどのリソースを使って余裕がなかった。


私がここに来て国民の注目も集めているし流石のケチな父上も大盤振る舞いで物資を送ってくれたようでこの先困ることはないだろう、問題解決までは定期的に送ってくれるみたいだし。


食料の製造用最高級ピコマシンに、軍用の自動戦闘装置に、人の形状をとれるマシン……ふむ、私が思ってるよりもいっぱい届いたな。


私達の周りは防音シートで囲まれ、多くの超高性能マシンによって一瞬で木々が伐採、整地され、建物が見る間に出来ていく。


目玉飛び出そうなほど驚いている王様が後ろに転びそうになったので空中に散布したピコマシンで受け止める。


僅か30分ほどで建物の一階は完成した。動画ではなく生身で見ていても結構面白い。


なんで大きな岩を割ってるのに音が聞こえないんだろうか?建築はやはり見ていて楽しいな。すぐに終わっちゃうからもっと長く続いてほしい気もするがこういうのは長くダラダラ進むよりも素早く終わってこその風情なのだ。


王様は楽しんでくれたかな?私は結構楽しめたのだけど。


あとで「王様楽しませてみた」とかで動画投稿しようかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る