前世の記憶
私はハルーンとの話しが終わった後もかおりの家のソファーに腰かけていました。
かおりはハルーンを通して話すととても疲れている様でした。
「かおりさん、大丈夫ですか。少し休んでください」
「ええ、大丈夫よ」
かおりはそう言ってきました。
「それよりも、話をまとめましょう」
「まとめる?どういうことですか?」
「あなたは過去生の夢をみました。そこから沢山のことを学んだはずだわ。そして癒されたと思うのよ」
確かに私は過去生のことを思い出す度に、心が癒されていくのを感じました。
過去生を再体験することで私の心の中の不安感や恐怖心などが薄らいでいったのです。
子供のことを考えると意味もなく涙が出てきたことも過去生からのものだと分かりました。
自殺願望も過去生からのものだとも理解できたのです。
「私はまた、高次元のマスターであるハルーンと交信してみます。あなたはハルーンと話してみてください」
「はい、わかりました」
かおりはその会話が終わると軽いトランス状態に入りました。
暫くしてからでした。
「私は、ハルーン…」
ちょっと低くてしゃがれた声がかおりの口から洩れ聞こえてきました。
「ハルーンですか?」
「そうだ。私はハルーンだ」
「ハルーン、私に何かまだメッセージはありますか?」
「ある…」
そうハルーンは言ってきました。
「大切なことは忍耐とタイミングなのだ。すべてのことには時がある。人はその時々にやってくるものを受け入れ、それ以上を望まない方が良いのだ。命に終わりはない。そして人は決して死なない。新たに生まれてくるということも本当はないのだ。ただ、異なるいくつもの場面を通り過ぎてゆくだけなのだ。終わりと言うものはない。人はたくさんの次元を持っている。時間と言うものは人が認識しているようなものではない」
ハルーンはそう話しました。
「ハルーン、私たちの命に終わりはないのですね。なぜ、生まれ変わりを繰り返すのですか教えてください」
「人は魂の状態だと人が感じる痛みや苦しみや喜びなどを体験することができない。肉体があって初めてその経験ができるのだ。人はその人間関係から多くのことを学ぶのだ。だから何度も生まれ変わりを体験しなければならない。しかし、あなたが見た過去生はほんの一部に過ぎない。そしてあなた達は生まれてくる相手も選んでくるのだ」
ハルーンはそう話しました。
私にはまだ時が来ていないのか、ハルーンの話すことが半分しか理解できませんでした。
尚もハルーンは話しました。
「全てはバランスが必要なのだ。自然はバランスを保っている。動物たちは調和を保ち暮らしている。人間だけがまだ平和に生きることを学んでいないのだ。人間は自らを滅ぼそうとし続けている。そこには調和もなければ、自らが行うことに何の計画も持っていない。自然とかけ離れてしまっているのだ。自然はバランスを保っている。自然はエネルギーと生命と再生である。しかし、人間は破壊しているだけなのだ。人間は自然を破壊している。人間は他の人間も破壊している。結局人類は自らを破壊することになるだろう」
私はこのハルーンの言葉を聞いてとても驚きました。
しかし、やはり私にはまだ時が来ていなかったのか半分もハルーンの言葉を理解できなかったのです。
でも、何となく理解できるところもありました。
人は生まれ変わりを繰り返すことで、成長してゆくということが分かったのです。
私が今まで経験してきた人生は、全て魂の成長のためだったのです。
いろいろな人生ドラマは私達人間が成長するためには必要不可欠なことだったのです。
その人生ドラマから喜びも悲しみも幸せも体験する必要があったのです。
私は、和也や健や春樹との関係からたくさんのことを学ぶ必要があったのです。
それは父や母との関係も同じでした。
私はハルーンの言葉を聞いて少し怖さもありましたがとても心地よいと感じました。
かおりはトランス状態から覚醒しました。
少し疲れている様でした。
「都築さん、少しは落ち着きましたか?」
「は、はい。何とか落ち着きました」
「かおりさんは大丈夫ですか?」
「大丈夫です…」
「お茶でも入れましょう」
「ありがとうございます」
そう話すとかおりは1階にお茶を入れに行きました。
私はとても心が満たされ穏やかな気持ちになっていました。
そして、心から幸せだと感じたのです。
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