出逢い 1 精霊

私は夢から覚めました。

でも、この夢は実にはっきりと記憶に残る夢でした。


私は25歳の時に出会った占い師のことを思い出しました。

その時もらったメモはどこか手帳にはさんでありました。


もう5年も経っていました。

果たしてあの占い師の阿部かおりは私のことを覚えているかどうかわかりませんでした。


私はちょっと震える指でスマホにかおりの電話番号を入れていきました。

携帯の呼び出し音が鳴っています。


暫くすると声が聞こえてきました。

「もしもし…」


「あの、阿部かおりさんですか?」

「はい、そうです。あなたは都築美都さんですね?」


「は、はい。そうです。なぜわかったのですか?」

「もうそろそろ、連絡が来る頃だろと思っていました」


かおりはそう言ってきたのです。

私はとても驚きました。


「都築さん、私の家にきてくれませんか?」

かおりはそう言ってきました。


「は、はい。大丈夫です。私も相談に乗って欲しいことがあります」

「わかっています。そのお話をしましょう」


そう言うとかおりは電話を切りました。

かおりの自宅は私の家からそんなに遠くではありませんでした。



私の自宅から最寄り駅A駅から二駅先のB駅の近くに住んでいたのです。

私は次の仕事の休みの日にかおりの自宅に行きました。


B駅から歩いて10分くらいの所にありました。


かおりの自宅は住宅街の中にあり、その建物はドイツ風でレンガを使った大きな家でした。


私はかおりの自宅のインターホンを押しました。

するとかおりが出ました。


「はい、どなたですか?」

「都築です」


「都築さんですか?入ってください」

「はい」


そう言うと私はかおりの自宅に上がりました。

かおりの自宅は全面白いクロスでおおわれていました。


鏡や家具などもとてもおしゃれで、北欧を感じさせる物でした。

私はかおりの自宅の2階にある10畳ほどのフローリングの部屋に通されました。


部屋に入るととても落ち着くお香の香りがしていました。

その香りは私の心をリラックスさせてくれました。


部屋にはグリーンの大きめの円形ラグが敷いてあり、そのラグの上にはローテーブルがひとつと、白いソファーが二個置いてありました。


そのテーブルの上には何冊かの本のようなものが置いてありました。


「さ、座ってください」

そうかおりは私に話してきました。


「はい、ありがとうございます」

そう私は言うとソファーに腰かけました。


「お茶でも飲みますか?」

「はい、頂きます」


そう私が言うとかおりはハーブティらしきものを持ってきてくれました。


私がそのハーブティを一口飲んだ時でした。

「先日、都築さん、夢を見ましたか?」


「え?なんでそれがわかるのですか?」

私は驚いて聞きました。


「昨日の夜、私のところに精霊が現れたのです」

「え?精霊ですか?」


私は精霊とはなんだろうと思っていました。

「精霊とはなんですか?」


「私の場合、高次元の魂を持った存在のことです」

そう、かおりは言ってきました。


「その精霊が今も私の中に来ています」

かおりは尚もそう言ってきました。


かおりの声は少し低くなってきたように感じました。

その声はとても優しくも感じたのです。


「先日見た夢の話をしてください」

そうかおりが言ってきたので、私は先日見た夢の話しをしました。


話しをし終わったころでした。

「私は、高次元に住む精霊です。名前はハルーン…」


かおりの口からちょっと口調の違うしゃがれた声の人が話してきたのです。

「ハルーンですか?」


私は話しかけました。

するとハルーンは私にこう言ってきたのです。


「そうだ。私はハルーンだ。あなたは夢の中で何かを学んだのだ。何を学んだのか?それを思い出せるか?」


私はその言葉を聞くと急に意識が遠のきました。

それこそ夢でも見ている様な気分になり、思い出したのです。


「そうです。私は自分を許さなくてはならないことを学びました…私は自分のした行いを悔いて、自分を責め、そして死にました…恋人も幸せにすることができませんでした」


私の口からそんな言葉が出てくるとは思いませんでした。


「あなたが子供を怖がり、涙を流す理由はそこにあったのだ。罪もない子供たちをガス室に送り込んだ記憶が現世でも残っていたのだ。その責め苦と恐怖であなたは子供を持つことかできなかった。でも、それは仕方ないことだ。自分を許すのだ。そして、義母も許すのだ」


そう、ハルーンは私に言ってきたのでした。

私はその言葉を聞くと頬を涙が伝って流れていくのを感じました。


そして、心や体の中から癒されていくのを感じたのです。

私は1時間ほど涙が止まらず泣き続けました。


私は半分夢うつつの状態でした。

暫くすると、またあのまばゆい暖かな光を感じました。


そのまばゆい暖かな光は私の心も体も包み込みました。

私はとても安らぎと幸せを感じたのです。


これがハルーンとの出逢いでした。


その後もハルーンとは切っても切れない存在となってゆくのを私はまだ知りませんでした。

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