第15話 最高のアンコール

 まさか、アンコールを先輩方と一緒に歌えるなんて。


 デビュー時の衣装を着た桃子さん。


 可愛い。


 やっぱり可愛い。


 とんでもなく可愛い。


 尊い。


 なんて思いながら、涙が止まらない。


 あーあ。今日は泣かないって決めてたのにな。


 桃子さんに成長した姿を観てもらうために。


 強くなった姿を認めてもらうために。


 そんな私の肩を抱いて、桃子さんが

「みなさーん、声出していきましょうっ」

 声を張り上げた。


 ファンのみんなは、応えるように野太い声を上げる。


「よし、それじゃあ……華凛。最後の曲紹介、よろしく」


 背中を優しく押された。


 うん。


 泣いてるままじゃいけない。


 リーダーの仕事をまっとうしなきゃ。


「……ホントに、本当に最後の曲です。大切なデビュー曲です。盛り上がっていきましょう! 『満天の星空よ』」


 イントロが始まるのが先か、会場から大歓声が聞こえたのが先か。


 ほぼ同時だったかもしれない。


 メンバーがたちが花道へと走っていく中、私は桃子さんに手を取られた。


「ふぁ!?」


「ふふふっ、私たちも行こっか」


 返事を待たずセンターステージへと走り出してしまった彼女につられて、私のカラダ脚は勝手に動き出す。


 握られた手は、体温以上に、会場の熱気以上に熱かった。

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