第14話 Surprise!

 約2時間。


 文字だけ見れば長く感じるけど、ライブだとあっという間。


 激しいダンスナンバーが続くときはしんどい。


 それ以上に、楽しさがまさる。


 ファンのみんなの興奮が伝わってきてね、無我夢中で歌って踊るんだ。


 そうして迎えた、最後のアンコール前のMC。


「みなさん、今日は本当にありがとうございました。私たちがここまで成長できたのは、支えて、愛してくださったみなさんのおかげです」


 頭を下げれば、会場が大きな拍手で包まれる。


 練習を沢山積んだ。


 批判を沢山受け止めた。


 涙をこらえて、メンバーを叱咤激励してきた。


 10周年の大切なライブを成功させないといけない。


 プレッシャーはとてつもなかった。


 でも、大きなミスなくここまでこぎつけた。


 残りはあと1曲。


「次が最後の曲です! みなさん盛り上がっていきましょう!」


 右の拳を突き上げてファンをあおった瞬間、ステージの照明が落とされた。


 え、なにごと?


 打ち合わせになかった演出。


 ここにきて、トラブル?


 嘘でしょ。


 やめてよ。


 不安にかられたのは私だけじゃない。


 メンバーもファンのみんなもざわついている。


 なにか喋らなきゃ。


 場を繋がなきゃ。


 マイクを口もとに当てようとしたそのとき、メインステージの大階段のテッペンにスポットライトが当てられた。


 後ろを振り返ると、


「10周年おめでとう」


 久しぶりに聞く桃子さんの声。


 彼女をセンターに、卒業していった先輩方がずらっと並んで立っていた。


 グループを支えていたメンバーたちの登場。


 会場が揺れるんじゃないかっていうぐらい大きな歓声が上がった。


 芸能活動を続けている他の先輩と違って、引退して桃子さんまで来てくれるなんて。


 嬉しすぎて……リーダーになって初めて泣いてしまった。

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