エピローグ 約束
薔薇の花束
ライブ後、
「サプライズで来てくれるなんて! 心臓が止まりそうになったじゃないですか。言ってくださいよ」
桃子さんに駆け寄って文句を言ってしまう。
本当は会えて嬉しいのに。
サプライズ登場してくれて嬉しいのに。
素直じゃないなあ。
我ながらそう思います。
「言っちゃったらサプライズじゃないでしょ。頬を膨らませて言わないで」
苦笑しながら、汗を拭いてくれる。
「そうですけど」
優しいぃ……好き。
じゃなくて!
「私、成長できていますか? 輝けていますか?」
文脈が滅茶苦茶なのは自覚してます。
けど、一番聞きたいことだから!
桃子さんからリーダーを引き継いでからの約1年2カ月。
一生懸命努力してきたんだ。
「まだまだだね」
って言われたらどうしよう。
流石にへこむ。
また泣いちゃう。
「どうなんですかっ」
自分が汗臭いのを自覚しているから近づけないけど、本当はずいっと迫りたい気分。
「ふふっ、ちょっと待ってて」
仕方ないなあ……って感じで微笑んで、桃子さんは楽屋の方へ走って行ってしまった。
「あの反応はどっち? え、わかんない」
戸惑いながら待つこと1分。
帰って来た桃子さんは背中に両手を回していた。
ん? なんか持ってるのかな。
「はい、これ」
アイドル時代と全く変わらないキラキラとした笑顔で渡されたのは、
「えっ」
薔薇の花束を手渡された。
「これが私の答え」
ライブが終わって落ち着いていた心臓の鼓動が早くなって、手が震える。
じわじわと涙が滲んでくる。
これは悲しみの涙じゃない。
嬉し泣き。
だって、
「12本じゃないですかあ」
意味は知ってる。
桃子さんへの想いを拗らせ過ぎて調べたことがあったから。
「そう、12本」
意味は、『付き合ってください』。
「受け取ってくれる?」
そんなの決まってる。
根本的に私から告白したんだし。
なんかちょっと恥ずかしい。
それでも、ちゃんと目を見て言わなきゃね。
「勿論です」
終わり
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