第9話 花が散る 2 *桃子*

「正直、『もう辞めようかな』そう思った時期もありました。けれど、ここまでアイドルを続けられたのは仲間たちの、応援してくれたファンのみなさんのおかげです」


 2017年から徐々に売れ始めて、グループの雰囲気が良くなっていった。


 揉め事が減った。


 団結力が増した。


「私にとってメンバーは家族と同じくらい大切な存在です。みんなといると楽しいし、自然と笑顔になれます。とっても居心地がいい場所です」


 ずっといられたらいい、なんて。


 いつの頃からか思うようになった。


 でも、

「いつまでも私がリーダーだったら、このグループは成長しません。リーダーは、4期生の華凛にバトンタッチします」


 人のカラダで言う『新陳代謝』かな。


 この環境に甘えず、次の世代に任せなきゃいけないんだ。


 それが、私が最後にできるリーダーとしての仕事。


「この選択を後悔しません。でも、勝手なことを言うけれど……心のどこかで私のことを覚えていてくださると嬉しいです」


 わがままだよね。


 新陳代謝とか、カッコつけておきながら。


 仕方ないじゃん。


 ファンのみんなから忘れられるって凄く寂しいことだもの。


 一人だけでもいいから、死ぬまで覚えていてくれたら……それでいい。 


Push☆Pushプッシュ・スター・プッシュは私の青春そのものでした。メンバーと、ファンのみなさんの幸せを祈っています。今日は……今日は本当にありがとうございましたっ」

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