第9話 花が散る 1/2 *桃子*

 ステージ上からメンバーがいなくなって、私一人になった。


 マイクを握り、深呼吸をする。


 私が話し出すのを察してか、拍手がやみ、会場が静寂せいじゃくに包まれた。


「みなさん、今日は本当にありがとうございました」


 なにを話そう。


 最後になにを伝えよう。


 卒業を発表してからずっと考えてきた。


 頭が真っ白にならないように、シミュレーションしてきた。


 それなのに、話そうと思っていたことが頭から飛んで行ってしまった。


 声も目も潤んで仕方がない。


 兎に角、文章が滅茶苦茶でもいいから話さなきゃ。


「15歳でデビューして……8年間、リーダーとして走り続けてきました。中学、高校時代。学校帰りも休みも日もレッスンを受けて、ライブをして。もてる時間の全てを捧げてきました」


 あの頃は大変だったなあ。


 売れないからグループの雰囲気が悪くって。


 そもそも思春期の女の子たちが集まってるんだからね。


 多少の揉め事はあるわけですよ、毎日のように。


 誰の肩ももたず、仲裁ちゅうさいしなきゃいけなかったから、滅茶苦茶気をつかったよ。


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