第6話 玉砕覚悟 3
表情を一変させ、
「ふふっ」
と笑った桃子さん。
そんな表情もするんですね。
綺麗です……じゃないっ!
「えっと、あの、それってどういう――」
「貴女が成長した姿を見せてくれたら、今よりもっと輝いたら、そのとき返事をするわ」
脳内を整理する時間をください。
さっき桃子さんはなんて言った?
えっと「今は、まだダメ」って言いましたね。
うん。
それで「成長したら」「輝いたら」「そのとき返事をする」……。
「ということは、保留?」
「そうね。ふふっ」
あっ、頭の中で考えていたはずなのに口に出てました。
そんで「ふふっ」って!
もうっ、この人はどれだけ私の心をがんじがらめに惹きつけるつもりなんでしょう。
無自覚だろうけど。
無自覚が一番たちが悪いんですけどね!
頭がこんがらがってる私に、
「後輩じゃなくて、一人の女性として、恋愛対象として向き合う。約束する」
桃子さんは微笑みながら優しく言った。
あぁ、その優しさが苦し……え?
「ホントですか!?」
思わず立ち上がって大きな声が出てしまった。
「ホントホント」
マジだ。
マジだった。
「あの、気持ち悪くないんですか。女から告白されて」
座りながら尋ねれば、
「別に。今までもあったし」
問題発言。
「は?」
「そんな眉間に皺寄せないでよ」
微笑んで誤魔化さないでください。
こちとら真剣なんです。
「誰とも付き合ってないから」
「そうですか……」
一安心。
取り敢えずね、うん。
そうだよなー、桃子さんみたいに魅力的な人は同性からも告白されちゃうよね。
私が最初じゃなかったのが悔やまれる。
うじうじ告白を見送っていた過去の自分をぶん殴りたい。
「10周年、楽しみにしているから辞めないでね。あと、リーダーの話、ちゃんと考えておいてね」
「あっ、はい」
立ち上がった桃子さんにつられて壁の時計を見れば、もうすぐレッスンの時間が始まる時間になっていた。
私も行かないと。
その前にもう一つ。
「あの、因みになんですけど……好きな人ができたから、芸能界を引退するんじゃ――」
「違うわ」
完全に余計な一言でした。
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