第7話 受け継ぐ

 家に帰って、お風呂に入って、無駄に沸き立つ心を落ち着かせてからソファに座った。


 桃子さんは私のことを考えてくれるって言ったんだから、私だってちゃんと考えないと。


 私にはリーダーシップも、グループをまとめる力もない。


 桃子さんのようなリーダーになれるとも思わない。


 けれど、桃子さんは言ってくれた。


「華凛は華凛らしいリーダーになればいいんだよ」


 私らしく、か。


 そうだよね。


 桃子さんは桃子さん、私は私。


 別の人間なんだから、無理に彼女になろうとしなくていい。


 なれるわけがないんだから。


 それに、私とは違う色をもつ桃子さんだからこそ、好きになったんだと思うし。


「自分らしい、新しいリーダー像を見つけなきゃ」


 桃子さんという高い壁を超えなければ、きっと私は彼女に認めてもらえない。


 苦しくても辛くても、成長しなきゃ。


 桃子さんのために。


 勿論、ファンや、メンバーのみんなのためにも。


 ソファの横に置いていた鞄からスマホを取り出し、

「もしもし……華凛です。夜遅くにすみません。あの、今日の話なんですけど」

 桃子さんに電話をかけた。


「私、リーダーになります」

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