第5話 適任 3 *桃子*
「それは……」
ビンゴ。
なにか悩んでることでもあるのかな。
「言ってみて」
促してみると、
「引退してなにがしたいんですか」
俯いたまま言った。
ん? それが言いたかったこと?
「なにがかあ……うーん。少しの間はゆっくりしたいかなあ。ずっと走り続けてきた。もがき続けてきたから」
「そうなんですね」
「うん」
「……」
はい、絶対違う。
華凛が一番言いたかったこと、これじゃない。
だって俯いたまま顔を上げないんだもん。
言葉が喉に詰まってるような雰囲気出してるんだもん。
仕方ない。
もうひと押ししてみますか。
「華凛。この際だから言ってみて。多分この先お互いに忙しくって、こうしてゆっくり話す時間はないかもしれないから。私は、華凛の本音が聞きたい」
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