第5話 適任 2/3 *桃子*

「どうして私なんですか」


 揺れる瞳。


 迷ってるのかな。


 根本的に、なりたくないのかな。


 思い切って聞こう。


「リーダーになるのは、嫌?」


「いっ、嫌じゃないです……けど」


 あっ、リーダーになること自体は嫌じゃないんだ。


「けど?」


 少し俯きながら、

「私は桃子さんみたいなリーダーにはなれません」

 消えそうな声でそう言った。


「そんなことない。私以上に、メンバーのことをよく見てるじゃない」


「そんなこと……ないです」


 オウム返し。


 うーん。すんなり承諾してもらえるとは思っていなかったけれど。


 なんだろう。


 華凛、言いたいことを我慢してる感じがする。


「私は責任感があって、自分のことだけじゃなくてメンバーのことを考えられる貴女だからこそ、任せたいの」


「……」


 無言かあ。


 考え中、ってことかな。


「それに、選抜制になってから貴女はずっと選抜されてる」


「桃子さんもじゃないですか」


「そうね」


 笑う場面じゃないんだけど、苦笑しちゃった。


 拗ねたような口調が可愛いんだもの。


「ずっと同じステージに立ってきた貴女は、私のことよく見ていてくれたでしょ」


「はい」


「今決断しなくていいから、考えてみてくれない?」


「……はい」


 んーやっぱりなんか我慢してる気がする。


 俯いちゃってるから表情は見えないけど。


 これでも一応約9年リーダーを務めてきましたからね。


 わかるのよ。


「ねぇ華凛、貴女もしかして、私になにか言いたいことがあるんじゃない?」


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