第5話 適任 1/3 *桃子*
*
2月下旬、事務所の会議室に
コンコンコン。
「どうぞ」
「おはようございます」
頭をちょっと下げ、低姿勢で入って来た華凛。
目が泳いでる。
多分、なんで呼び出されたのか必死に考えてるんだろうなあ。
もしかしたら「怒られる」とか「注意される」とか思ってるのかな。
全然違うんだけどね。
「どうぞ、座って」
「しっ……失礼します」
おどおどしちゃって。
いつもはもっと気軽に接してくれるのに。
なんだか最近距離を感じるんだよねえ。
とはいえ、ちゃんと話をしないと。
私の真正面に座った華凛の目を真っすぐ見つめる。
「ごちゃごちゃした前置きは嫌いだから、単刀直入に言うね」
「はい」
「華凛に次のリーダーを任せたいの」
「……はい?」
目を見開いて驚いちゃって。
可愛いなあ。
ちょっと丸顔で、大きな瞳が特徴的な華凛。
グループの中で一番長い、腰の丈まである、一度も染めたことがないという丁寧にケアされた黒い髪。
いつも私の後を追い続けてくれた大切な後輩。
誰よりも努力家で
「貴女がこれからグループを引っ張っていって」
そんな華凛だからこそ、これからのグループを任せたいの。
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