第12話 前進あるのみ
桃子さんが卒業した年の10月。
6期生が加入し、
ほんとに大所帯。
このグループは一体どこまで大きくなるんだろう。
考えただけでため息が出そうになる。
嫌なわけじゃなくて、人数が増えると目が行き届かなくなるから。
日常の些細な揉め事を中立的な立場から収めながら、私は今まで以上に練習を重ねた。
誰からも文句を言われない『絶対的なセンター』、『絶対的なリーダー』になるために。
桃子さんが言った通り、彼女が卒業してから出したシングルの全てで私はセンターだった。
批判を沢山浴びた。「またか」「見飽きた」「リーダーもやってセンターもやって、強欲すぎ」って。
アイドルが人間だってことを忘れているアンチの言葉。
気にならなかった、と言えば嘘になるけど、どうでもよかった。
私が認めてほしいのは一人。
桃子さんだけだから。
あとね、彼女が卒業して直後、私は髪を切った。
腰まであった髪を、思い切ってボブにした。
初めて髪を染めてみた。
長い髪は私のアイデンティティだったけど、変わらなくっちゃいけないと思ったから。
手初めてに、ね。
アイドルの仕事だけじゃなく、女優の仕事も頑張った。
自分の今後のため、そして、グループの知名度アップのため。
仰る通り、強欲で貪欲なんですよ。
すみませんね。
別にいいでしょ。
ちゃんとリーダーとしての仕事もこなしてるんだから。
これまで以上にメンバーに気を配るようになった。
積極的に声をかけるようになった。
先輩にも、後輩にも。分け隔てなく。
そんな中、12月に2人が抜けて、年が明けて1人が卒業、4月に1人が脱退した。
桃子さんが抜けてたから当分は誰も抜けないだろうと思っていた私が馬鹿だった。
みんな、別々の道を歩んでいった。
別れはいつも辛い。
寂しい。
どんなに苦しくっても私は、私たちは歩みを止めない。
前進あるのみ!
そうして私たちは、2024年5月。
35人で、無事に10周年を迎えることができた。
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