第1話 言葉にできない 2

「昨日まで一緒にやってきた仲間が、ある日突然、いなくなることもありました

私は見送ることしかできませんでした。そして、今年最後の1期生になりました。今度は、見送られる側になります」


 悲しい、寂しい。


 そんな言葉じゃ感情を説明しきれない。


 私がアイドルになったきっかけは桃子さんで。


 頑張ってこられたのも桃子さんのおかげで。


 彼女がいなくなったらどうすればいいんだろう。


「メンバーには、このステージで初めて言いました。みなさんと同じです。ファンのみんな、メンバーのみんな、驚かせてごめん」


 置いてけぼりにしないでよ。


 私は、まだ貴女に伝えたいことがあるんだ。


 抱いてしまった感情を、玉砕覚悟で伝えたいんだ。


 いつか伝えよう、と先送りにしていたのが悪かったんだろうか。


 まだ伝える勇気なんか1ミリもないよ。


 だって私たちはアイドルで。


 恋愛なんてご法度はっと


 異性愛だろうと同性愛だろうと。


「最後の日まで、全力で駆け抜けていきます。よろしくお願いします!」


 そう言って桃子さんは頭を下げた。

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