第1章 想い

第1話 言葉にできない 1/2

「これまで1期生として、リーダーとして……私なりにグループを引っ張ってきました。これからは、頼れる後輩に任せたいと思います」


 自分の卒業の話なのに、桃子さんはいつも通りフロントの端に立っている。


 こんなときぐらいセンターに立ったっていいのに。


 そんなことを考えながら、桃子さんの卒業宣言を受け入れられない自分がいる。


 メンバーからは嗚咽おえつする声が聞こえてくる。


 誰も予想していなかった。


 まさかこんなタイミングで、グループの柱である桃子さんが卒業してしまうなんて。


「卒業は以前から考えていました。どうしてこのタイミングなんだと、問われれば……もう、このグループは、私がいなくても大丈夫。そう思ったからです」


 違うよ、桃子さん。


 私たちにはまだまだ桃子さんが必要だよ。


 全然大丈夫なんかじゃないよ。


 今すぐそう言いたい。


 でも、さっきこちらを振り返った桃子さんの顔は決意に満ちあふれていて。


 言うことなんかできない。


 誰にも彼女を止める権利なんか、ない。


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