第3話 New Year 1/2

 新しい年を迎え、桃子さんが卒業するまであと数カ月。


 卒業宣言はメディアで大きく取り上げられて、いろんな人が彼女がいなくなることを惜しんでいる。


 そんな中で私たちは、いつも通り仕事をこなすだけ。


 2月の桃子さん卒業曲発売に向けて収録、レッスン。


 忙しさに殺されそうになる。


 みんな多少なりとも疲れた表情を見せるけれど、桃子さんはずっと笑顔だった。


 最後の瞬間まで笑っていよう、と決めたみたいに。


 私はそんな彼女のことを四六時中考えていた。


 桃子さんは、今までセンターになったことがない。


 2014年にデビューしてから一度も。


 それは彼女がリーダーだからなのか、華が足りないからなのか。


 たしかに桃子さんは、センターで輝くタイプじゃない。


 日陰に咲く可憐な花。


 卵型の顔、大きくて立体的なパーツ。切れ長の瞳。


 肩下までのダークブラウンなセミロング。


 可愛い系ではなく、美人系。


 TVで初めて観たときの印象。


 今でも変わらない。


 桃子さんは、縁の下の力持ちだ。


 体調が悪いメンバーに誰よりも早く気づくし、ライブでは率先してファンを煽る。


 ダメなところは容赦なくダメ出しする。


 嫌われる覚悟をもってリーダーを務めている彼女は、ファンからもメンバーからも信頼されている。


 そんな桃子さんのことが、好きだ。


 憧れじゃない、likeじゃない。


 間違いなく、愛。


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