三三六ノ葉 いきなりなんですか!?
「楽しみにしているよ」
「諾。お任せを」
任せてくれ、と言って闇樹は頭をさげて部屋から消えた。と、入れ替わりになぜか島津義弘がやってきた。……肩に武器をこれでもかと担いで。え、なになに? なに!?
「こん中で使ったことある武器とそうでないもんとでわけてみんしゃい、聖縁どん」
「あの、唐突になにがはじまってますか?」
「ええ歳こいて固有武器も持ってなかとは憐れみ湧いてきてならんかったんばい!」
……つまり、要は使ったことのある武器の中から義弘がこれは! というのを選んでやるもしくは使ったことがないものでも使えそうなものは教えてやろう、ということ。
ありがたいのだが、もしも明日からその武器を使った鍛練を、というなら全力で遠慮したい聖縁である。だって、それって楓のたどった末路と同じになる可能性大で。今度は打撲などでは済まないという負の可能性なのである。だったら、せめて慣れが欲しい。
そうは思ったが義弘にそれを訴えても「甘えんな」されるのは目に見えているので聖縁はおとなしく武器を選りわけていく。刀や槍などの普通の兵士が使う武器は使ったことがある。あとは闇樹が持ってきてくれた武器図鑑に載っていたものをひとつ、ふたつ。
その他の得物はすべてはじめて見るものばかりというよりはじめて現物を見る、の方がより正確だが、とにかく少々どころでなく奇抜なものばっかりだった。聖縁の選りわけに義弘はあからさまに憐れみの、悲しそうな目を向けてきたが、知らんものは知らん。
知ったかぶって失敗することほど恥ずかしいことはない。……て、いうか義弘なので知ったかぶりで間違えたりしたら闇樹など比でないほどの罰をくだすか。命懸けの死にもの鍛練を組まれそうなので正直大事。と、いうわけで武器をふたつに、二組にわけた。
義弘はまだカワイソウの目だったが、それで聖縁の知識と実戦経験が増えるわけでもないのは知れたことだったので以上にはやめて武器の中で聖縁にあいそうなものを選別してくれているっぽい。で、彼が目を留めたのはなんでもない革製に金属をつけた手袋。
しばらく思案顔だった義弘だが、次には聖縁にその手袋を渡した。聖縁ははてな。
なぜ? なんでこのものものしさ満載武器群からちょっと変わってはいるけど手袋でしょうか? 手の血行よくしたい? それかひょっとして武器の前に防具候補ですか?
「これからそいつを相棒にしんしゃい」
「は?」
「異国の地に身ひとつで戦う術に特化した戦士たちがいるいう話ば聞いたことあるばい。聖縁どんはどちらかというと武器で間合いを稼ぐよっかは懐にいち早くもぐり込んで速攻特攻する戦法を考えてみてもよか、とおいどんは思ぉたっちゅー感じで、そいつを」
「え、いやでもそれってどっちかっていうと俺なんかよりもっと逞しいひと向きな」
「筋骨隆々だけが肉弾戦選択の特権じゃなか! 特に聖縁どんはすばしっこか! ほいだら小回りが最大限に発揮できる戦法を取ってみるんも一興ば! 頑張りんしゃい!」
一興って、一興程度のアレで今後の方針決定されても……。とは思ったが、とりあえずせっかく見繕ってもらったので手袋をはめてみる。なんか妙にしっくりくるのはきっと気のせいだと思うが、ホント、マジでこういうのは元親辺りが似合いそうなんだけど?
そう、思いはしたが、聖縁は手袋をはめたまま簡単に構えてシュッシュ、と拳を素振りしてみる。いや、異様にしっくりくるのは本当にやはり気のせいだと感じるのにどうしてか、運命の出会いを感じさせる。……無機物に運命もクソもないと思うのだけどね。
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