第12話  冒険者ギルドへの納品

 ヘルネの町に戻った俺たちは納品のため冒険者ギルドに直行する。


 帰り道に思いのほか時間を使ってしまい、夕方になってしまった。

 この時間になると早く狩りを終えた冒険者たちが酒を飲んでいるのが常で、俺みたいな『遊び人』は絡まれるのが常である。


「おっ威勢のいい遊び人が帰って来たぞ!」

「薬草取りは、はかどったかな?」

「いやいや、スライム狩りでしょ!」

「はてさて、クルト達の試験の結果はどうなったかな?」


 モブ冒険者たちが言いたいことを言うが放っておけばいい。

 いちいち構っていては遊び人やってられないんだぜ。

 

 俺は丁度手をあけていた、昨日お世話になったマチルダさんのところへ一直線で歩いていく。


「マチルダさん戻りました!納品したいのですが今お時間大丈夫です?」

「あら、ケガがないようで何よりね、納品ならいつでも歓迎よ」


「じゃあちょっと外までいいですか?」

「ん?一般素材ごと納品したいってことかしら?」


 いえ、お肉やら毛皮やらは焼き尽くしてきました、魔石だけですが……量がね。


「まあ、そんな感じです、クルトとターシャが外で待ってますので、いいでしょうか?」

「はいなー何を狩ってきたのかしら、ワクワクしちゃうわね!」


 マチルダさんのみならず、一連のやり取りを聞いていたモブ冒険者たちも付いてくる。

 

 冒険者ギルドからでるとそこは………一面に広がる魔石の海でした!


「ちょっちょっちょ多すぎーこれがエラムさんの納品ですか?」

「はい全部僕の納品です、GからEランクの魔石それぞれランクごとに集めて仕分けして10個単位で並べてあるので、数を再確認していただければ。」


 冒険者ギルド内でマジックバックからドシャーと魔石をぶちまけるのも一興だったが、1900個もの魔石を分類し、数を数えるなんて作業をマチルダさんにさせるわけにはいかない。

 なによりマジックバック持ちと分かるとそれはそれでめんどくさいことになる可能性がある。

 色々な理由があるが律儀に魔法で並べて置いた。


「嘘だろ?どうしたらこんなに狩れるんだ?」

「すんげーこんなに多くの魔石見たことないんだぜ」

「これだけあれば10個くらい貰ってもばれないかな?」

「いやむしろ全部とってもばれないのでは……ダメだ頭が混乱してきたー」 

 

 盗み良くない!

 

「バレますね。僕らの師匠を怒らせるのはやめた方がいいですよ。」


 クルトが得意げに言う。

 これ君の手柄じゃないんですけど……


「お師匠さまの魔石を狙う人は私が相手になりますっ」


 ターシャちゃんの殺気でモブ冒険者が怯んじゃってますけど?


「分類して並べてくれるなんて気が利くのね、でも確認に30分くらい貰えるかしら?」

「分かりました、合わせて冒険者ランクアップの査定もお願いします」

 

「これだけの量だからDランクまでは上がるのは間違いないわ、私が保証する。」


 マチルダさんに保障されて俺は仮Dランクとなり、とりあえず今日の目標は達成だ。


 さて仕事の終わりにはなにするかって?

 決まっているだろう、酒を飲む!


「ターシャとクルトはマチルダさんにつきあって、魔石盗まれないか監視しておいて!あとついでにさっきの腕輪で修行しておいてくれ、俺はちょっと情報収集してくるよ」


「はーい」

「がんばりますっ」


 素直でよろしい、冒険者ギルドに再度戻った俺はメニューにドラゴン麦酒があることを確認する、とてつもなくアルコール度数の高い酒で旨いとは言えないが酔うためには最高の酒だ。ならばやるしかないでしょう?


「皆さん!ちょっと時間と金ができたので、『遊び人』と酒の飲み比べでもしないかい?ドラゴン麦酒を一杯づつ飲んで先に飲めなくなった方が負け!俺が負けたらこの店のお代は全部持ちますよ!みなさんは一杯飲むごとに俺の質問に正直に答えてくれればいい、ここらの情報が欲しいんでね!」


「お代を持つだと!是非やらせてくれ!」


 俺も俺もとモブ冒険者たちが集まってくる。

 その数10名ほど。


「よし!まずは俺からだ!」

 巨体の禿マッチョが真っ先に名乗りを上げる、見るからに酒に強そうだ。


 「俺の名前は!聞いて驚くなっ!」

 なんだなんだ?有名人なのか?


 「質問すれば教えてやる!」

 ……いや別に知らんでもいいや。


 とりあえず一杯目を互いに飲む。


 バッターン

 たったの一杯で大男が酔いつぶれれその場に倒れこんだ……あの名前ほんとは聞いておきたいから起きてー!


 「次!」


 次の男はさっきから暇を見つけては俺の魔石に目がくらましていた男だ、名前はガレスというらしい。

 ガレスは、30前半だろうか、長身で黒い髪をやや長めに伸ばし、その一部を後ろで束ねている。

 薄いグレーのシャツにブラックのパンツを合わせ、黒い革のローファーを履いる中々のナイスガイだ。

 いくらおしゃれしようが俺の魔石を狙った罪は重い、お前だけは潰す!


 まず一杯互いに飲む


「この冒険者ギルドで一番強いのは誰?」

「ヴェルナーさんだろうな、長年この町で冒険者をやってる人望も実力もある人だ。」


「ってことはこの町の冒険者はAランクが最高ってこと?」

「そうだ、少し前まではSランクが一人いたんだがな、そいつが居なくなってからは、Sランクでこの町を拠点にしてる奴はいないな。」


 ほむ、Sランクいないのか。


 さらにもう一杯飲みあう。


「そのSランクの名前は?」

「名前か……イリヤって言うんだが聞いたことはないか?」


「うーんうーん、ないかな?」


 三杯目のドラゴン麦酒に手を出す。

 

「最近ギルド内が騒がしいようだけど?何があったのかな?」


「うぃーそれはだなぁぁぁぁー」


 というとガレスはバッターンと倒れてしまった。

 おい酒だけ飲んで倒れるなんて卑怯だぞ!

 ガレス生き返るんだ!


 ガレスを見ると気持ちよさそうに寝ている……起こすのは諦めて次行こう次!


「じゃあ、お次は私が参加させてもらってもいいかな?」

 そこにはこの町で一番信頼されているという冒険者ヴェルナーがいた。

 丁度いい、町の有力者に聞いてしまうのが一番だ!


「いいですけど?酔いつぶれて折角築いてた信頼なくすことにならないよう気を付けてくださいね。」

「ははは、君もすでに随分飲んでるだろ?ベテラン冒険者は無茶なクエストには手を出さないものだよ。」


 お互いニヤリと笑い一杯目を飲む。


「じゃあ質問です、今この町随分不穏なことになってるようですけど?何があったんですか?」


 昨日は首を突っ込まないでいようとおもっていたが、今はターシャとクルトの師匠でもある、二人にも関係することのようなので情報だけは収集しておかなければならない。

 万が一面倒ごとの巻き添えになったら堪らないからな!


「悪いがそれはCランク冒険者以上にしか共有できない情報なんだ、ほかの質問にしてくれるかな?」


 町に来て二日目、Gランク冒険者には話せないって?

 うん、その気持ち良くわかる!


 なんて思ってると、丁度マチルダさんがギルドに入って来た。


「エラムさーん数の確認終わりました!今からあなたは仮Dランク冒険者から真のDランク冒険者です!おめでとうございます」

 

 やった当初の目的通り初日でDランク達成だ。

 でもね、今求められてるのはCランク冒険者らしいのよね……仕方ない。

 予定変更するしかない。


「マチルダさんありがとう、あとさらに仕事頼んですみませんが追加でこれもカウントしてください、D級ランクの魔石100個とホワイトタイガーの金牙10個です。たしかホワイトタイガー10体討伐がCランクへのランクアップクエストですよね?」


 予定では初日にDランク二日目にBランク三日目にAランクを目指す予定だった。

 仕事ってのは計画通りすすめるものだ、遅れることも早まることも許されない!

 早く目標を達成したらその時間は俺のもの、遊ぶもよし昼寝するもよし!

 でも早く終わったからって残りの仕事に手を付けるのはご法度、なぜなら仕事が終われば次の仕事を振られるからな!

 社畜時代の記憶が俺にそう警告していたが、予定変更だ。


「Dランクモンスターまでこんなに狩ってたんですか?すごいなぁ……でもごめんねホワイトタイガーの金牙私見るのが初めてなの、これが本当にホワイトタイガーのものなのか上の人間に確認とってきます。」


「マチルダさん、それはホワイトタイガーの金牙で間違いないよ、私もなんどか手に入れたことがある。ホワイトタイガーのレアドロップ品だ。売れば一体いくらになることやら?」


「ヴェルナーさんの言うことなら間違いないですね!エラムさんおめでとうCランク到達です!」


 見ろこのヴェルナーさんへの絶対的信頼感!

 ヴェルナーさん

 流石イケオジ!

 

「マチルダさんありがとう、さてCランク冒険者のエラムです、ヴェルナーさん話し聞かせてもらってもいいですか?」


「うむ、異論はない、ターシャ、クルト、ガルク、も異論はないかな?」


 そうして、ヴェルナーさんの長い話が始まろうとしている……

 あのー要約してもらっていいでしょうか?

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