第11話   話し合い②

さあ、いよいよ謎の双子のベールをはぐ時が来た!

 嘘ついたらお兄さん怒っちゃうからね。

 師匠になるって話も全部おじゃんになるんだぜ。


 長い話には飲み物もつき物ということで、カモミールやラベンダー、ミントなどのリラックス効果のあるハーブをブレンドしたハーブティーに子供向けに蜂蜜をガッツリと入れて提供する。

 やっぱりリラックスしたほうが、ついつい言うべきじゃないことまで言っちゃったりして、身の上話するにはいいと思うんだよね!

 

 遊び人的大人の配慮ってやつだ。


 そうして主にクルトが話を始める。


「僕たち双子は………カクカクシカジカであーだーこーだーなむほーれんげーきょーカクカクシカジカ……」


 なんだってー!そうだったのか……二人とも大変な思いして生きてきたんだなぁ。

 笑いあり涙あり、驚きありの話だが、正直言えば結構予想していた通りの話だったりした、長いので要約する。


 1 二人は双子である。知っていた。

 

 2 幼少期に両親を亡くし、密偵ギルドのボスに我が子のように愛をもって育てられ、密偵としての各種訓練を積んできた。


 3 両親の死の真相は謎だが、密偵ギルドが関わっているだろうが、密偵ギルドには恩を感じておりこの件については調べる気はないこと。


 4 職業適性を調べた際クルトは「重戦士」ターシャは「回復術師」と適性がでたこと、密偵ギルドの後継ぎとして期待されていた二人はさらに精密な適性検査をした結果第二適正職業としてクルトは『密偵』ターシャは『暗殺者』の適性があり、密偵ギルドとしても一安心したこと。


 5 『重戦士』と『回復術士』は実の父と母の職業適性を受け継いだだろうこと、二人はその職業についてはあこがれを抱いており、隠れて訓練していたこと。


 6 14歳になった際、密偵ギルドのボスに冒険者として力を試したいと伝えたところ、3年以内にSランク冒険者になれれば認めてやるといわれ、脱走ではなくギルドに許容されて冒険者をしていること。


 長い話だったがようやく要約ができたんだぜ……

 14歳から3年間でSランクを目指すってのはなかなかにシビアな条件だが、二つの職業適性を持つ二人なら無理でもない。

 実際Sランク冒険者の最少年齢は13歳のはずだ。


「というわけで、少しでも強くなりたいんです、エラムさんの足手まといにはなりたく無いので一時的なものでいいんです、とくにターシャはほとんど独学でヒーラーとして勉強していて壁にぶちあたっているというか……」


 うん?その壁さっきぶち破って『オールヒール』使えるようになってるぞ!

 あらやだ、俺ったらすでに名師匠しちゃってるじゃん。


「因みにさ師匠の件断るとどうなるのかな……?」


 俺は恐る恐る聞いてみる。


「僕らはエラムさんを脅すようなことはできません!ただ素直に今日あったことをギルドに報告するだけです!」


「じゃあ師匠の件を承諾したらどうなるのでしょうか?」


「私たちが森についた時にはすでに森は燃え尽きた後でした、私たちは何も見ていません!」


「よし、今日から俺が君たちの師匠だ!特訓はきついけどがんばってくれ!」


「エラム師匠!ついていきます」

「エラム師匠!っついていきます」


 流石密偵ギルドで鍛えられた二人である、交渉事は実に上手い……

 まあ、自分で燃やした森の火の後始末は自分でするのが焚火好きとしてのマナーよね……


 もう滅茶滅茶厳しくきたえてやらぁ!


「特訓の内容はあとで考えるとしてだ、ドロップ品の回収しようか、提案だが二人で倒したホワイトタイガーの魔石だがご遺体ごと俺に買い取らせてもらえると助かる、とにかく今はギルドに納品しまくって冒険者ランクをあげたいんでな、師匠がGランク冒険者じゃ弟子としても居心地悪いだろ。」


「ホワイトタイガーの魔石くらいさしあげますよ?これから師匠になっていただくんですから。」

 

 クルトが気前の良いことをいっているが、それは良くない。

 金のやり取りはその場できっちり明瞭会計、あと腐れのないようにするのが長く楽しく遊ぶコツ!


「クルトそれはよくない、自分の手柄は自分のもの!冒険者なら誰かに横取りされる前にちゃんと分け前をもらわないと駄目だ、金はいくらあっても困ったりしないからな。」

 

 モンスターは倒すとどうなるか?

 答えは簡単、死体になります……つまりは都合よく魔石とレアドロップだけ置いて肉片は消滅するみたいなことにはならないってことだ。

 人力、スキル、魔法、アイテム、等々で解体しなけりゃならない。

 それがかなり大変なので、高ランクの冒険者やランクを上げたい冒険者は、高く売れて大きさ重量も小さな魔石や高く売れる部位のみを回収して回るのが常だ。

 ホワイトタイガー自体の魔石はDランクの魔石となるので3000ジェニーが相場だ。

 各魔石の相場価格はSS時価 S100万 A10万 B1万 C5000 D3000 E1000 F500 G100ジェニーとなっている。

 因みに1ジェニーは転生前でいう1円と等価だ。

 

「Dランクモンスターの相場は3000ジェニーだが……俺は死体ごとマジックバックで持ち運んであとで商店に売ることができるからなホワイトタイガーは毛皮も含めてDランクにしては高く売れるはずだ10万ジェニーくらいかな、俺の利益も確保して、6万ジェニーでどうだ?」


「そんなにっ!貰えないですよ!Dランクモンスターの魔石の相場は3000ジェニーだから、五体分で15000ジェニーで十分です。」

 

「えっと、お兄ちゃんちょっと落ち着こうか?丁度隠しナイフも壊れちゃったし、お兄ちゃんここは師匠に甘えましょう!」

 ターシャ!目が金になってるー!!


「六万ジェニーもほんとにいいんですか?ありがとうございます師匠一生ついていきます!」


  クルト六万ジェニー程度で君の一生を売っちゃダメだぞ。

 そこらへんの奴隷より安い値段だ。


「そうと決まれば、全部まとめて回収だ!」


 北の焼け野原に1000体のモンスターの死体、南の焼け野原にもほぼ同数の死体が眠っている、宝の焼け野原なんだぜ!


 俺はマジックバックを開いて「回収」っと唱えるとマジックバックに2000体分のモンスターが入り込んでくる。

 俺のマジックバックは特注品の為色々な便利機能が付いている、その一つが『自動回収機能』、魔力を消費するが、自分が倒したモンスターを識別し、収納してくれる。


「師匠のマジックバック凄い容量!2000体も入るなんて…」


『自動回収機能』付きマジックバックだなんてっおっおっおいくらするんでしょう……」


 ターシャたんがどんどんお金に染まっていく……


 さらに『解体』と唱える、2000体のモンスターの死体が魔法により解体される。

『分類』2000体の切り刻まれたモンスターのうち使えるのと使えないものが分類され整理される。

『計算』今の処理で何がいくつ取れたか一気に計算してくれる。


「解体までしてくれるなんて、便利すぎる!」

「さすが師匠様……一生ついていくしかないっ」


 ふう、マジックバックの力を使っているとはいえ、魔力は俺が供給しなくてはならない、全部の処理に特級魔法三回分くらいの魔力をつかったんだが?

 収穫はすんごいんだぜ……聞いて驚くな!


 G級モンスターの魔石×1000個×100ジェニー=10万ジェニー

 F級モンスターの魔石×600個×500ジェニー=30万ジェニー

 E級モンスターの魔石×300個×1000ジェニー=30万ジェニー

 D級モンスターの魔石×100個×3000ジェニー=30万ジェニー


 魔石だけで100万ジェニーほど稼いだことになる。

 1日の狩りとしては破格の報酬だ!

 

 ただ、まあ何というか……森を焼き尽くしてこれかぁ?

 採算とれてる?賠償とか請求されたらとてもじゃないが足りないぞって思うにはまだ早い!

 マジックバックの中身はまだまだあるのだ。

 

 ここにさらに一般素材が+される。

 一般素材とは、解体すれば絶対にとれるモンスターの肉や牙、毛皮のことだ。

 マジックバックを持たない冒険者たちはほとんどこの一般素材を無視していくことになるので、魔石よりも高く売れたりする!


 さあどーだ!

 むむむむ?何がどうした?

 一般素材でマジックバックがウハウハになってるはずだったんだが?

 

「焼け焦げたホワイトタイガーの肉」「焼け焦げたシルバーウルフの牙」「焼け焦げたホーンラビットの角」……

 他にも焼け焦げたシリーズばかりしかないのですが、うん、よくわかります森を焼きはらった罰ですね……今後低級モンスターを広域殲滅する際には炎系統の特級魔法だけは使わないと俺は心に誓った。


 クルト君やっぱり君が倒したホワイタイガー六万ジェニーで買い取るって話なしにしてって言いたいけども、流石に師匠としてのメンツが俺を思いとどまらせる。


 しかし職業『遊び人』の俺にはここからさらに一発逆転があるのだ!

 『遊び人』として成長を極め切っている俺は、『遊び人』成長倍率の高い『幸運』の値が一般ピーポーにくらべて飛びぬけて高いのだ!

 それこそ、まさにチート級にな。


 それが何するかはお察しの通りってやつで、レア素材のドロップ確率が格段に高いのだ。

 そしてレア素材は強度の強いものが多く、地獄の業火にも耐えうるはず!

 

 普通の人間ならレア素材は1000体狩り続けて一個取れるかどうかだが、俺の場合は10体に一個くらいの割合でザクザクと取れる。

 確認すると………そこには大量のレア素材が……燃え尽きて……なかった!

 ってどっちなんだいっ!


 はい、残っておりました。


 でも普段より格段に少ない……レア素材よお前もか、燃え尽きちまったか!

 どーやらFランクモンスターとGランクモンスターから取れるレア素材が燃え尽きてしまったようだ。

 それでもEランクとDランクのレア素材が合計で40個ほどある!


 Eランクモンスターからは

 「フォレストスライムのスライム液」が10個

 「ウィンドラットの羽根」が10個

 「ロックタートルの銀岩甲羅」が10個

 

 Dランクモンスターからは「ホワイトタイガーの金牙」が10個


 ふふふ、これをジェニーに換算すると……

 判りません。


 レア素材は供給量が非常に少ないためすべて時価となる。

 高ランクのモンスターのレア素材ともなれば、まだ使用方法が確立されてないものも多い。

 市場がないため、必要としてくれる人間に直接交渉が基本となるのだ。


 レア素材に関しては、王都に行くまでは眠らせることになるだろうが、致し方ない。

 レア素材もちゃんと売れれば十分元は取れただろう。

 そう、だってこの森は森林火災にあっただけなんだ……

 賠償なんてする必要はないのだもの。


 本当に俺はいい弟子を持ったものだ!


「さて、目当ての森は森林火災にあって焼失してしまった、運よく俺たちはドロップ品の魔石を回収できたので、俺としてはDランク冒険者になるのに十分な魔石量を確保できてるからここにはもう用はない、帰ろうか?」


「はい!」

「はい!」


「じゃあクルト、この魔道具付けてくれるかな?」


 といってマジックバックから腕輪を出してクルトにつけてやる。


「おもっ!師匠これなんの呪いですかー!」


 呪いって程大層なものではない、ただ流した魔力に応じて体全体に重みを負荷としてかけてくれる筋肉トレーニング用アイテムだ。

 まずは、一番軽めに40Kgに設定しておく。

 俺も昔使わされてたが、慣れればなとかなるものだ。


「最初は重いと思うけど、すぐに慣れるから、クルトがんばってくれ」


「はい、師匠のご命令とあれば!ぐぬぬぬ」


 すでに苦しそうなクルトである。


「じゃあターシャはこっちの腕輪をつけてくれる?」


「もちろんです、ちなみにーどんな効果なのでしょう?」


「こっちはね、一定の魔力を流し続けないと電気流れる奴だね、大きすぎてもダメ、小さすぎてもダメだから気を付けて。」


 魔力の微細な操作と維持する力を向上させる狙いがある。

 最大魔力でガコンと殴るのなんて、誰でも出来るのだ、そんなのは特級魔法でGランクモンスターを倒すようなもの。


「微細な魔力操作……一番苦手なのなんでわかるんですかっ!」


「師匠だからなっ!」

 

 そうなの?まあ今知ったけど、とりあえずなんでも乗り切れる師匠だからなってマジックワードを発動させておく。

 

「とりあえず、二人ともそれ付けて町まで帰ろう!明日にはそれ付けたまま狩りに行くことになるから、今のうちに精一杯慣れておいてくれ。」


 40分で来た道だったが、帰りは3時間かかったが、二人とも音を上げることなくついてきた。


 密偵ギルドで相当過酷に修練してきているのが良くわかる。

 実際今の段階でBランク相当の実力はあるだろう、この三日間でAランクまで上げるのが師匠の腕の見せ所ってやつよ!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る