第10話 話し合い①

「んっんんーふぅーよく寝た!やっぱり昼寝は最高だね!」


 気持ちよく目が覚めると、そこらじゅうが焼け野原だった……

 なんじゃこりゃー!

 どこの俺がやったんだ?

 ちょっと前の俺ですね、よくわかってます……


「エラムさんおはようございます。」

 

 ターシャが話しかけてくる、若干目が怖いのは気のせいかしらね。

 大事なお兄ちゃんを危険な目に合わせた張本人だけど、ほぼ無傷だったし、『オールヒール』使えるようになったし終わり良ければすべて良しでしょ!

  

「エラムさんおはようございます、冒険者ギルドに報告しなくちゃいけないし、色々お話お聞きしたいことがあるんですけど、いいです?」

 クルト君起きたようだ、元気そうでなによりである。

 

「俺も君たちに聞きたいことが沢山あるんだよね……なんか、お互い色々秘密あるよね?とりあえずお互い色々抱えてる秘密話せるだけ話して、冒険者ギルドへの報告は一緒に考えようじゃないか?報告次第では君たちの監督責任が問われかねないしね。」


「うーん内容次第ですよーエラムさんの実力は十分わかりましたけど……ちょっとやりすぎかなっていうか……そのー死にかけた気がするっていうか……下手なモンスタートレインとかより危険っていうか……森が一個なくなった気がするというか……ただ、僕らも昔の戦い方を言いふらされるのはちょっと困るので、エラムさんのお話次第でギルドに報告する内容考えますよ?どの辺まで報告すべきか、妥協点を探しましょう。」


 さすが、クルト君話が分かるいい子なのか?頭の回転の速い手強い相手なのか?

 どちらかというと手強いな、14歳とはいえCランク冒険者になるだけのことはある!

 でも俺は14歳のころもっと賢かったもんね、なにせ転生者ですし……

 あと、俺の魔法で死にかけたことは夢と思っていてくれるといいのだが……そのために眠らせたのにぃ!


 とにかく、長い話になりそうなので、飯でも食べながらゆっくりと話そうじゃないか!

 俺はマジックバックから机と椅子を出してやる。


「さあさあ、座ってくれ!長い話になりそうだしね」

「ってマジックバック持ちですか!初めてみました!」

「すごい、便利、ほしぃなあ……」


 ターシャちゃん?

 目の色変えるのやめてくれるかな、ブランドバック欲しがる女の子みたいに育てた覚えはないぞ。

 うん、実際まったく育ててなかったわ!


 さらに俺は、とっておきの品を出してやる。

 第三王子エドワードのPTにいた時の昼食だ!

 いつ遭難してもいいように、PT一か月分の食料は収納しておくことにしている。


 フレッシュな野菜とオリーブオイルを使ったサラダ。

 グリルした鶏肉や牛肉のステーキ。

 じっくり煮込まれたトマトベースのパスタ。

 クリーミーなポテトグラタン。

 焼きたてのパンやピザ。

 豊富な種類のチーズや生ハム、サラミなどのワインに合うおつまみ。

 新鮮なフルーツやケーキを盛り合わせたデザートプレート。


 すべて、王都の一流シェフが第三王子の為につくった超一級品で、出来立てほやほやアツアツの状態でマジックバックに保管されている!


 クルトとターシャの顔を見ると、クルトは涎を垂らしそうにりながら目を輝かしている。

 ターシャはデザートプレートに釘付けで目をキラキラしている。

 うん、どうやら普通の14歳に戻ってくれたようだ。


「ここは俺の奢りってことで!好きな物たべてよ、どれにする?それとも全部いっちゃう?お代わりだってあるぞ。」


「エラムさんいいんですか?全部……全部くださーい!」

「私もー全部!デザートは別腹なのでお代わり貰うかもっ!」


「おう!二人とも育ちざかりだからな!好きなだけ食べてくれ。」


 ふふふ、完璧に少し前にあった惨事のことは忘れてくれたようだな。

 でも周りの焼け野原が俺に現実を突きつける……とりあえず腹を満たそう!

 

 そうして優雅な昼食しつつ色々話そうと思ったが……

 

「うまい、うますぎる!こんな美味しい食事食べれるなんて……幸せだー」

「おいしぃよーわたしもこんな料理作れるようになるためにも、沢山食べなきゃ!食い意地はってるんじゃなくて勉強のためなんだからっ!いくら食べてもいいのです。」


 二人とも食事に夢中で話す感じではない件……

 大食い&早食い大会みたいになってるが、お代わりは一か月分はあるから沢山食べてくれ。

 せめてもの罪滅ぼしよね……

 

 『遊び人』秘奥義❕餌付けは成功しているようだ。

 

 しばらくしても二人は食べるのに夢中だが、時間ももったいないので俺は勝手にしゃべりだす。


 『遊び人』かつ『賢者』であることや、宮廷魔術師であることあたりを話したときは、さすがの二人も目を丸くしていたが、食べる手は止めなかった……

 そうして俺は、第三王子のPTに戻るために手っ取り早く『大きな成果』を上げるためSSランク冒険者を目指してることまで説明し終わるころにはさすがの二人も満腹で動けません状態になっていた。

 俺の秘密といえることすべてを話したわけじゃないけども、質問してこないからしょうがないよね!

 ちゃんと聞いてくれたら答えたよ?


 なんで一遊び人風情がこんな高級なマジックバックを持ってるかとか?

 

 俺の最大の秘密ともいえる『遊び人』を極めると、上がりまくるステータス『幸運』についてとかね。

 

 そこらへんは追々説明することになるかもしれないし、三日後には王都に向かう予定なので話すことはないかもしれない。


 モグモグタイムが丁度終わって一息ついた二人が感想を述べてくれる。

 

「エラムさんも大変なんですね……SSランク冒険者かぁーエラムさんならなれる気もします!」


 いや、なるんだよクルト君!


「宮廷魔術師って時点で規格外ですから……同じ規格外のSSランクもなれるのかな?どっちが難しいでしょうねっ」


 ターシャちゃん宮廷魔術師といってもピンキリだからね、俺はどちらかというとキリの方なので……規格外とか言わないでもらいたい!


 そうして俺の話を聞いた二人は「ちょっと二人で相談したいので待っていてください」といって席をたって、何やらヒソヒソ相談を始めた。

 遊び人スキル『地獄耳』を使えば丸聞こえにすることもできたが、流石にそれは野暮ってもんだ。

 俺はなんの相談してるのか?

 戻ってきたとき何をいってくるのか?

 想像しながらワクワクソワソワしながら、暇していた。


 五分ほどで二人が戻ってくると……


「エラムさん僕たちの師匠になってください!」

「エラムさん私たちの師匠になってください!」


 双子の二人が見事なハーモニーで懇願してきた。


 師匠?師匠?死傷?支障?刺傷?詞章?やっぱり師匠だよな……


 エラム師匠か……悪くない響きだな。

 19歳で師匠と呼ばれる俺……悪くないねえ。

 才能豊かな14歳の双子を鍛えまくる、悪くないねえ!

 『遊び人』の俺が師匠になる……それはちょっとまずいかもねえ!

 

 PTに一刻も早く戻る必要がある俺に、二人を鍛えてる時間は……ないねえ?

 二人を師匠にすれば長期的にいろいろメリットはあるだろうが、最短でPTに戻るにはメリットがないかねえ?


 うーん悩ましい!


「師匠ねえ……師匠!……才能ある君たちの師匠になるのはやぶさかではないけども、即答は出来かねるな、まずは二人のことをしっかり聞いてから判断させてもらおうかな?」


「はいわかりました師匠!」

「はいわかりました師匠!」


 いや、まだ師匠じゃないし!

 とにかく君たちとは、まだ出会って二日の謎の双子と愉快な『遊び人』の関係でしかないんだが?

 君たちの身の上話を聞いてから、決めさせてよ……


 重すぎる過去をもった弟子とか『遊び人』的に無理だぞ?


 といことで、次は弟子のクルトとターシャが話す番となった。

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